研究課題
平成26年度に、HIV-2組換え流行株がCCR5指向性であり、T細胞由来のR5-MaRBLEに感染することを見出した。そこで、平成27年度にはR5-MaRBLEへのHIV-2組換え流行株の感染プロセスを詳細に解析した。その過程で、HIV-2ウイルスを産出させる細胞によって、HIV-2ウイルスの感染細胞に与える影響が異なることを新たに見出した。まず、ヒト胎児腎由来の293T細胞で産出させたウイルスを用いて、R5-MaRBLEへの感染実験を行った。R5-MaRBLEはプロモーター活性を持つLTR(Long Terminal Repeat)の下流にFirefly ルシフェラーゼがコードされたプラスミドを持つため、R5-MaRBLE内でのウイルスの増殖はFirefly ルシフェラーゼの発光強度の増加によりモニタリングが可能である。ウイルス感染後、1,3,5,7日目にFirefly ルシフェラーゼの発光強度を測定したところ、HIV-1ウイルスでは、7日目にかけて発光強度が増加していくのに対し、HIV-2ウイルスを感染させた細胞では培養3日目に最も高い発光強度を示した後、5日目以降ほとんど発光が確認できなくなった。また5日目以降にHIV-2ウイルスを感染させた細胞の生存率が極端に低下していることが確認された。ヒト子宮頸がん由来HeLa細胞で産出したHIV-2ウイルスを用いて同様の実験を行ったところ、7日目においても細胞生存率の低下は確認されなかった。このことから、293T細胞に産出させた場合、HIV-2ウイルス特異的に、細胞内での急激な増殖および細胞死を引き起こすような変異、もしくは翻訳後修飾が起きている可能性が示唆された。現在、293T細胞に産出させたHIV-2ウイルスとHeLa細胞に産出させたHIV-2ウイルスの違いを明らかにするため、遺伝子、タンパク質レベルで解析を進めている。
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Journal of Virology
巻: 90 ページ: 1034-1047
10.1128/JVI.02369-15