研究実績の概要 |
1.当院のVAP後ろ向き調査:過去3年間に当院にて発生したVAPの後ろ向き調査を行った。2010年12月~2013年11月当院のICUに入院し、48時間以上の人工呼吸器管理を行った444名の患者のうち、134名(30.1%)がVAPを発生した。当院のVAPの特徴として、早期VAP(5日以内に発症)が多く、MRSA以外の原因微生物としてグラム陰性桿菌が主体であった。多変量解析にて予後因子(28日以内の死亡)としてARDSの合併(p=0.0001)が抽出された。ARDSは背景として慢性肺疾患の存在が有意に多く、また慢性肺疾患患者のVAP原因菌としてS.maltophiliaが有意に検出された(第88回日本感染症学会総会、第68回国立病院総合医学会(最優秀発表賞)、2015年American Thoracic Societyにて発表。現在論文投稿中)。 2.VAP患者の前向き登録:平成27年2月に当院の倫理委員会に受理され、3月より登録を開始した。また本研究検体保存専用に研究センターにて-80℃冷凍庫を設置した。現在VAP疑い例を含めて、30検体(BAL液、血液)を集積した。ELISAプレートのコストを考慮し、50例の集積に至った段階で肺上皮サイトカイン、マクロファージ由来サイトカインの測定を行う予定である。 3.論文、学会発表、受賞について:本研究に関連して、申請者は平成27年度以降に計4本の原著論文(下記)を受理された。国際学会では5演題、国内学会でのシンポジウム2演題、一般演題12演題を発表した。また、申請者は「肺炎における自然免疫細胞の役割を解明する」という研究総合テーマで、平成27年6月に角尾学術賞を受賞した。 論文#1 Kamata H, Yamamoto K, et al. Am J Respir Cell Mol Biol 2016, in press. 論文#2 Nagayoshi Y, Yamamoto K, et al. Int Med 2016, in press. 論文#3 Traber KE, Yamamoto K, et al. Am J Respir Cell Mol Biol 53:479-488, 2015. 論文#4 Hilliard KL, Yamamoto K, et al. Am J Respir Cell Mol Biol 53:387-390, 2015.
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次年度使用額の使用計画 |
CCL20, ヒト, Quantikine ELISAキット(funakoshi、R&D Systems)(2×76千円)、Human Fluorokine MAP kit BALF CXCL5, GM-CSF, IL-1β, TNF-α, IL-6, IL-8(funakoshi、R&D Systems) (2×280千円:80検体用)、Human Fluorokine MAP kit Blood CXCL5, GM-CSF, IL-1β, TNF-α, IL-6, IL-8(funakoshi、R&D Systems) (2×210千円:80検体用)、TNF-α, ヒト, Quantikine ELISAキット(funakoshi、R&D Systems)(2×76千円)、NF-kB p65 ActivELISA kit(funakoshi、IMGENEX)(2×42千円)、LPS(SIGMA,10mg 11千円×2)などの消耗品を購入予定。また論文校正料(5万円)、掲載料(10万円)、ボストン大学でのミーティング旅費(30万円)の確保も必要である。
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