研究課題/領域番号 |
26860780
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
渡辺 祐子 東北大学, 大学病院, 助教 (40610671)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | WASP / WASP恒常的活性化変異 / WIP欠損症 / X染色体連鎖性好中球減少症 |
研究実績の概要 |
恒常的活性化WASP変異による好中球減少症とMDS発症の分子機構 X染色体連鎖好中球減少症はWASP恒常的活性化変異(L270P)により起こるHAtagを付加したL270P恒常的活性化変異型WASP遺伝子発現ベクターを、骨髄球系細胞株K562に恒常的発現させ、最適な恒常的発現細胞株クローンを選択した。活性化変異WASP蛋白質が細胞核内に強発現すること、WASPチロシンリン酸化と活性化を確認した。この遺伝子導入細胞株により抽出したTotal RNAを、骨髄球系細胞の分化、アポトーシスに関与する遺伝子群の転写に絞りcDNAマイクロアレイ解析すると、Protein tyrosine phosphatase受容体c/CD45の高発現と、G-CSF受容体とRunx1の低発現、といった骨髄球系細胞分化と生存に重要な遺伝子群の発現変化を発見し、定量的RT-PCR法とWestern Blot法で検証した。L270Pにおいて、これら遺伝子群が真に転写活性調節を制御しているかを調べた。クロマチン免疫沈降法では、WASPは転写系に重要であるRNA polymeraseⅡを制御するp54nrbと会合しており、さらに免疫蛍光抗体法で細胞核内での複合体形成を確認した。Genomic DNAについてのクロマチン免疫沈降法と高密度タイリングアレイの組合せでは、野生型WASPとL270Pでは、同遺伝子座におけるDNA結合パターンは同様だったが、結合親和性は異なっていた。 以上より、恒常的活性化WASP変異は、核内に位置し、骨髄球系細胞の転写遺伝子を制御していた。(CY Looi,et al.Int.Immunol.26(6):341-352.2014)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1) WASPの細胞核内での新しい機能解析、WASP恒常的活性化変異によるX染色体連鎖性好中球減少症(XLN)および骨髄異形成症候群(MDS)の分子病態解析 上記については、論文発表に至った。 2)常染色体劣性WAS(WIP欠損症)の迅速スクリーニング法の開発、および3)常染色体劣性WAS(WIP欠損症)の分子病態の解析については、平成27年度の課題である。
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今後の研究の推進方策 |
2)常染色体劣性WAS(WIP欠損症)の迅速スクリーニング法の開発 WIPはヒトでは常染色体上にコードされていることを確認している。これまで世界的に、1例の常染色体劣性WIP欠損症が報告されているが、いまだ本邦ではWIP欠損症は診断されていない。本研究では、抗WIPモノクローナル抗体を用いたフローサイトメトリー法による迅速スクリーニング法を開発し、遺伝子診断系とともに、迅速な確定診断法の確立を目指す。 3)常染色体劣性WAS(WIP欠損症)の分子病態の解析 WASの新病型である常染色体性劣性WAS(WIP欠損症:Type-2 WAS)が発見された際には、WASP蛋白質発現量を確認し、X染色体連鎖性WASとの病態の相違を明らかにしてその疾病概念を確立する。これは新病型の分子病態の理解や、WASの遺伝子治療におけるベクター由来WASP蛋白質発現量の調節機構の理解に重要な意義をもつことになる。
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次年度使用額が生じた理由 |
WIP欠損症の発見がなかったため、次年度へ課題を持ち越しているため
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次年度使用額の使用計画 |
当初の計画どおり、薬品試薬および細胞培養、論文別刷、学会発表等に使用する
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