研究課題
研究対象はてんかん性脳症と呼ばれる、小児期に発症しけいれん発作や脳波異常によって発達に重篤な影響を及ぼす疾患である。これらの疾患群の遺伝的背景を明らかにするため、次世代シーケンサー(Ion Proton)を用いた全エクソンの網羅的解析を行った。まず、2家系にGRIN2A遺伝子変異を同定した。症例1は手の常同運動、呼吸異常、重度精神遅滞やてんかんを有する非典型的レット症候群の女児で、新生突然変異(c.1643C>G)を認めた。これまでに非定型的レット症候群ではGRIN2A変異は報告されていない。症例2は自閉症スペクトラムを伴う分類不能てんかん性脳症の症例で、スプライス変異 (c.1007 + 1 G>A)を認め,てんかんの既往がある母と母方祖母も同様の変異を有していた。この成果により、GRIN2A変異による疾患スペクトラムがより広いものであることが明らかとなった。次に、てんかんを伴う脳形成異常に対する全エクソン解析により、1例にASPM遺伝子の複合へテロ変異(c.3055C>T; c.6750delT)を同定した。この内c.6750delTはこれまで報告のない新規変異であった。本症例は小頭症(-7.6SD)、難治性てんかんを認め、ASPM変異を認める他の症例と比較して、より重度な精神運動発達遅滞を呈していた。また頭部MRIでは前頭葉優位なpachygyriaが認められ、ASPM変異を伴う原発性小頭症では前頭葉優位に脳形成異常を伴うことが特徴の一つである可能性を示した。また、てんかん性脳症に対する全エクソン解析を用いた共同研究の成果として、生後10か月時にてんかんを発症した女児例において、PIGG遺伝子に変異を同定し新たなGPIアンカー異常症として報告した。また、点頭てんかんの男児例にKCNQ3遺伝子変異を同定し、今後報告予定である。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 3件)
European Journal of Human Genetics
巻: 24 ページ: 129-134
10.1038/ejhg.2015.92
Am J Hum Genet
巻: 98 ページ: 615-626
10.1016/j.ajhg.2016.02.007