研究課題/領域番号 |
26860783
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研究機関 | 国立研究開発法人国立成育医療研究センター |
研究代表者 |
林 泰佑 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 循環器科, 医員 (70597129)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 心エコー / 小児 / 左室拡張能 / 右室機能評価 |
研究実績の概要 |
年齢・体格にばらつきのある小児における左心室拡張能、複雑心奇形の患児でみられる体心室右室や単心室の収縮・拡張機能を、超音波検査で評価する方法は未確立である。血流の粘性摩擦によるエネルギー損失値は、グローバルな血流の効率をあらわす指標で、その有用性はコンピュータシミュレーションを用いた研究で明らかにされている。血流速度ベクトル分布を可視化する新しい超音波技術Vector Flow Mapping (VFM) を利用してエネルギー損失値を実測できるようになった。本研究は、エネルギー損失値と、患者予後・各種臨床指標との関連を探り、複雑心奇形の心機能評価法の確立を目指すものである。さらに、様々な複雑心奇形の心エコー検査データをデータベース化して蓄積することにより、エネルギー損失以外の手法による体心室右室や単心室の収縮・拡張機能評価法についても検討することを目指している。 平成27年度は、大動脈弁狭窄や大動脈縮窄などの左室圧負荷を伴う先天性心疾患の小児を対象にエネルギー損失値を算出し、詳細な検討を行った。さらに、小児を対象とした報告があまりなされていない、人工弁置換術後の小児患者に対する心エコー評価、ファロー四徴症や極型ファロー四徴症の心内修復術後遠隔期の右室機能評価についても検討を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大動脈弁狭窄や大動脈縮窄などの左室圧負荷を伴う先天性心疾患の小児を対象とした検討では、拡張期の左室内エネルギー損失は正常よりも高くなる傾向を示したものの、高度の圧負荷により左室心筋肥厚を来して左室内腔が小さくなると、かえってエネルギー損失値は低下することが判明した。これは、左室内腔が小さくなるために、左室へ流入する血流が減少して、血流の持つエネルギーの総和が減少することと関連していると考えられた。 僧帽弁置換術後の小児患者における人工弁通過血流のドップラによる血行動態指標の解析では、体表面積で補正した人工弁サイズとの相関が明らかとなり、小児の人工弁狭窄のエコー診断基準の確立に結びつく成果が得られた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、右室機能評価に焦点を当てて解析を進める方針である。VFMを用いた右心室内のエネルギー損失の解析に関する報告はほとんどなく、正常例を含めて解析を行ってその臨床的意義を明らかにすることを試みる。また、右室収縮能の指標として、三尖弁輪収縮期移動距離、移動速度、右室面積変化率などが広く用いられているが、小児や先天性心疾患患者でのこれらの指標の有用性はこれまでに十分な検討がなされておらず、エネルギー損失値との関連も含めて解析を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
残額が8円となり、翌年度に繰り越すこととなったが、残額は端数とみなされる額にとどまっており、概ね予定通りの研究費執行ができたと考えている。
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次年度使用額の使用計画 |
今後の研究の展開に必要な、データ記録装置(ハードディスクドライブなど)、論文投稿費用、学術集会への参加費用として使用する予定である。
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