本年度も、小児の先天性心疾患、後天性心疾患を対象とし、心エコー検査を用いた心機能の評価法について研究を進めた。 先天性完全房室ブロックに対して恒久的ペースメーカが植え込まれている小児患者を対象に、二次元スペックルトラッキングによるストレイン計測に基づいた心機能評価を行い、ペーシング様式と心機能の関連について検討を行った。心室ペーシング部位は、右室流出路、右室心尖部、左室心尖部、さらには両心室ペーシングと、多岐にわたっていた。肺動脈と大動脈の駆出開始時間のずれ(Interventricular mechanical delay; IVMD)に基づいて、ペーシング様式を分類し、IVMDが生理的範囲を超えて長い患者では、左室のストレインおよび同期性が低下していることが明らかとなった。明らかな心不全を呈している者はいなかったものの、心機能には有意な違いが存在しており、長期的なフォローアップを適切に行う上で、重要な知見を示すことができた。 また、近年注目されている拡張障害について、左房ストレインによる評価法を小児に適用する研究をスタートした。現在、予備的な解析を進めている段階であるが、左房ストレインは、心筋重量に相関しており、拡張障害を評価する指標として有用であることが示唆される。今後は、正常心臓と、心筋症、あるいは左室の圧負荷を来す疾患(大動脈弁狭窄症や大動脈縮窄症、術後の患者も含む)の患者で、左房ストレインをはじめとする心エコー指標を比較し、小児における拡張障害の評価法の確立を目指す。
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