家族性血小板減少症(以下FPD)と濃厚な白血病の家族歴を有し、11歳でT細胞性急性リンパ性白血病を発症した症例において、次世代シーケンサーを用いた全エクソンシーケンス解析を行った。FPDを呈していたが白血病を発症していない妹と、FPDを有していない父親と比較し、血小板減少症と白血病の背景因子となった遺伝子変異の同定を試みた。さらに、患児に発症した白血病芽球と体細胞との比較から白血病発症に直接的に関与する遺伝子変異を調べた。なお、FPD家系の母親は急性骨髄性白血病を発症しすでに死亡している。 まず、FPDの原因遺伝子として患児の体細胞と芽球、および妹にのみ存在し、父親に存在しない変異を検索したところ、SNPが785遺伝子にのべ1037個、indelが15遺伝子にのべ18個認められた。このうちSETBP1遺伝子にはindelが1個、SNPが2個認められた。 牧島らは2013年のnature genetics誌にSETBP1変異による過剰発現がRUNX1の機能低下をもたらし骨髄性悪性腫瘍の発症に関与することを報告した。すなわち、今回の解析では既報のFPDの原因遺伝子であるRUNX1遺伝子の直接的な異常は同定されなかったものの、SETBP1遺伝子を介した新規のメカニズムが関与している可能性が示唆された。 次に、腫瘍化自体に必須であったsecond hit遺伝子として、患児の体細胞に存在せず、白血病芽球には存在する変異を検索したところ、SNPが150遺伝子にのべ196個、indelが14遺伝子にのべ19個認められた。このうちアポトーシスに重要な役割を果たすミトコンドリア輸送蛋白をコードしているMTCH2遺伝子には、Exon1に4個のSNP、Exon13には2個のindelと1個のSNPが集積していた。特にrs76185606はQ19*変異によりstop codonとなっていた。
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