研究課題
まず、GD2が小児脳腫および網膜芽細胞腫に発現しているか腫瘍細胞株および病理検体で評価した。髄芽腫、神経膠腫、網膜芽細胞腫ではGD2の発現が高頻度に認められた。一方で、原始神経外胚葉腫瘍では発現が認められなかった。以上から、脳腫瘍や網膜芽細胞腫に対してもGD2を標的とした遺伝子改変T細胞療法の可能性が示された。次に非ウイルス遺伝子導入法であるpiggyBacトランスポゾン法を用いてT細胞へGD2特異的キメラ抗原受容体(GD2CAR)を導入した。ヒト末梢血から分離した単核球にGD2CARトランスポゾンベクター(pIRII-GD2CAR.28.z)とpiggyBacベクター(pCMV-PB)の両者を、nulceofection装置を用いて同時に遺伝子導入した。導入効率は5-15%であった。遺伝子導入7日後に、CARの発現しているT細胞をpositive selectionし、さらに培養したところ、遺伝子導入21日後のCAR発現率は20-60%だった。GD2CAR導入T細胞とGD2陽性腫瘍細胞株(網膜芽細胞腫および脳腫瘍)を混合培養したところ、GD2CAR非導入T細胞に比べて明らかに腫瘍細胞数が減少し、抗腫瘍効果が示された。しかし、CD19特異的CAR-T細胞の白血病細胞株に対する抗腫瘍効果に比べGD2CAR-T細胞の抗腫瘍効果が低かったことから、臨床応用に向けてはCAR構造の工夫や併用療法が必要と考えられた。併用療法としていくつかのエピゲノム薬と混合培養実験を実施した。そのうち、ヒストン脱アセチル化酵素(HDAC)阻害薬であるボリノスタット(SAHA)の併用によりGD2CAR-T細胞の抗腫瘍効果が増強されることが判明した。
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