研究課題
方法:①野生型マウスとMMP9-/-マウスの前脛骨筋内にカルディオトキシンを注入することで骨格筋傷害モデルを作製し、急性炎症から組織修復の過程でのMMP-9の働きについて免疫組織学的および分子生物学的手法を用いて解析した (N=4-5)。②ジストロフィン欠損 (mdx) マウスにMMP-9を欠損させたmdx;MMP9-/-マウスを作製し、骨格筋の炎症、壊死、再生、線維化について、2、4、8、14週齢および1歳齢で上記と同様の手法を用いて解析した (N=3)。結果と考察:骨格筋傷害モデルの解析では、MMP-9の欠損によりMCP-1発現およびMΦの浸潤が増加し、MIP-2発現および好中球浸潤は減少していた。さらに再生促進作用を有するM2MΦの浸潤は増加し、DMDの表現型の軽症化に関わると考えられているosteopontinの発現増加を認めた。4週齢のmdx;MMP9-/-マウスではMIP-2発現の低下、MCP-1発現の増加を認め、組織の炎症細胞浸潤はこれらに呼応する変化を示し、さらにはosteopontinの発現は一過性に著明に増加していた。14週齢のmdx;MMP9-/-マウスの骨格筋では再生線維が増加し、血清CK値の低下と筋力の増加が確認された。一方、1歳齢のmdx;MMP9-/-マウスでは骨格筋間質のI型コラーゲンの蓄積が増加し、筋力は低下していた。以上よりmdxマウスの骨格筋変性におけるMMP-9の主な役割は、若年期にはケモカインや炎症細胞の遊走に対する作用を介して炎症の収束を遅延させる一方で、高齢では間質線維成分の分解を促進し、組織の線維化を抑制する働きが主体となることが明らかになった。よって、MMP-9を標的分子とする治療は若年DMD患者には有効となる可能性があるが、臨床応用のためには治療を行う病期や投与期間を十分に検討する必要性が示唆された。
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Biochimica et Biophysica Acta
巻: 1852 ページ: 2170-2182
10.1016/j.bbadis.2015.07.008.