若年性骨髄単球性白血病(Juvenile myelomonocytic leukemia; JMML)は、稀少疾患ではあるが長期生存率が50%前後の予後不良な疾患である。同種造血幹細胞移植が唯一の根治的治療であるが、同治療を行ったとしても予後は依然として厳しい。近年、我々はJMMLを対象とした網羅的遺伝子解析を行い、新規原因遺伝子(SETBP1遺伝子、JAK3遺伝子)の発見に至った(Nature Genetics 2013; 937)。今回の研究の目的は、上記の研究を発展させるために、JMMLにおける病態の進展の中でも、急性転化(blast crisis)の分子遺伝学的機構を解明することである。 本年度は、昨年度に全エクソーム解析等を施行した3例のJMML急性転化例について、ヘテロ接合性消失、あるいは融合遺伝子等も対象とした、さらなる網羅的な解析を行った。JMML発症後に肉腫形成へと進展した1例では、JMMLの原因遺伝子変異であるNRAS変異がuniparental disomyによるヘテロ接合性消失を起こし、機能獲得変異がホモ接合となっていること、さらには6番染色体短腕に存在するヒト白血球抗原(HLA)の片アリルが失われ、免疫学的な攻撃を回避していることが確認された。JMML発症後に成熟B細胞性白血病を来した1例では、IGH-MYC融合遺伝子が形成されていることを確認した。しかしながら、JMML発症後にB前駆細胞性急性リンパ性白血病を来した1例では、新たな遺伝子変異の獲得を検出することはできなかった。
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