TAMはダウン症候群の新生児の10%に起こり、新生児期に白血病様の細胞が一過性に増殖する疾患で、多くは自然消褪する。約10-20%の症例は、自然消褪したのちに急性巨核芽球性白血病(AMKL)を発症する。TAMはダウン症候群に存在する21トリソミーに転写因子であるGATA1の異常が加わって発症することが知られており、さらにTAM細胞に何らかの遺伝的異常が加わり、AMKLへと進展することが推測されている。本研究では、TAMの異種移植モデルを作製し、白血病発症に重要な因子を特定し、新規治療開発への基盤開発を目標とした。 1)TAM患者検体の収集およびTAM異種移植モデルの作製 全国より新規発生のTAM患者検体を収集し、さらに同意を得られた患者より提供されたTAM細胞を免疫不全マウスであるNOGマウスへ移植した。合計15例の移植を行った。 2)患者検体およびマウス由来検体の遺伝学的解析 3症例でマウスへの生着を確認した。うち継代可能であった1症例について、正常対照細胞患者TAM細胞、およびマウス内TAM由来細胞(一次、二次、三次移植検体)について、DNAを回収し、SNPアレイ解析、エキソーム解析、DNAメチル化解析を行った。 エキソーム解析では、白血病モデルマウスにおいて共通する新たな異常は検出されなかった。SNPアレイ解析では、マウスモデルにおいて、過去にAMKLにおいて高頻度に指摘されている異常(CTCF欠損)を指摘した。本白血病進展モデルにおけるDNAメチル化解析の結果、患者TAM細胞と1代目マウス(TAMモデル)は同一のカテゴリーに分類された。一方で白血病モデルマウスとした4代目、5代目、6代目マウスでは、TAMモデルと比較して、特徴的なDNAメチル化パターンを示した。さらに遺伝子発現解析ではこのメチル化の異常が巨核球分化を阻害する方向に作用することが示された。以上から、ダウン症のAMKL進展において、DNAメチル化の異常が重要な役割を果たしていることが示された。
|