研究課題/領域番号 |
26860796
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
河合 朋樹 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (20631568)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 国内患者疫学調査 / 新規治療法の開発 |
研究実績の概要 |
平成26年度は本研究の目的であるFNLA異常症の遺伝型-表現系の把握、およびエキソンスキップ誘導を応用した新規治療法の開発を行うべく、遺伝子診断と病態解析の基盤整備を行った。FLNA遺伝子はコード領域が長くかつその変異が広範囲欠失であることが多いことから、このような遺伝子変異を効率的に検出するため、次世代シーケンサを応用した塩基置換変異、広範囲欠失の同定法の構築に着手した。また同定した変異の機能解析のために多様な評価系を構築した。具体的はリアルタイムPCRによるFLNAのmRNAの発現の定量化、FLNA蛋白発現の定量化、免疫染色による細胞分画ごとにFLNA発現の評価系、FLNA欠損メラノーマ細胞株を用いた再構築系よる変異FLNAの機能解析系、がある。前述した評価系を用いて、エキソンスキップによる非典型的な臨床表現系を呈したFLNAの家族例の病態解析を行った。FLNA欠損メラノーマ細胞株を用いた機能解析系において、エキソンスキップにより発現する部分欠損FLNA蛋白が細胞の接着能等において正常FLNA蛋白と同等以上の機能をもつことが確認された。このことからエキソンスキップがFLNA異常症の症状改善効果があることが示唆された。その成果を論文にまとめEuropian Journal of Human Geneticsに投稿し、すでにminor revisionの返事を受けている。全国調査に関してはすでに一次調査を行う体制を整備しており、27年度より本格的な調査を開始する。続けて、構築した遺伝子診断系、機能解析系を用いてFLNA異常症の遺伝系-表現系解析を行っていく。またマウスモデルを作成し、それを用いた病態解析、およびエキソンスキップを用いた新規治療法の創出についても並行して推進していく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画ではFLNA異常症疑い患者の全国調査を先行し、続けて遺伝子診断、病態解析を行う計画であった。しかし、遺伝子診断や機能解析評価系を整備することが、より効率的な全国調査に繋がると判断したため、これらの研究を先行した。平成26年度の成果として、前述した遺伝子診断体制、機能解析評価系が整備した。またエキソンスキップによる非典型的な臨床表現系を呈したFLNAの家族例を解析し、エキソンスキップにより発現する部分欠損FLNA蛋白が細胞の接着能等において正常FLNA蛋白と同等以上の機能をもつことを確認した。このことからエキソンスキップがFLNA異常症の治療法の一つとして有望視できることが示唆された。この成果は論文にまとめEuropian Journal of Human Geneticsに投稿し、すでにminor revisionの返事を受けている。全国調査に関してはすでに一次調査を行う体制を整備しており、27年度より本格的な調査を開始できる状況にある。以上の平成26年度の成果は当初の研究計画と順序に変更があるものの、FNLA異常症の臨床型-表現型解析、および新規治療法の開発という本研究の目的と照らし合わせると、おおむね順調に進展していると評価できる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成27年度より本格的にFLNA異常症の本邦での実態調査を行うための疫学調査を行う。まず全国の小児科を標榜する病院に対して、FLNA異常症についての説明を添えて、同患者を診療しているか1次調査をおこなう。回答のあった施設には、詳細な病歴等を聴取するため、2次調査を行う。また各臓器別の専門家である研究協力者へ依頼のあった症例のリクルートも行う。臨床的にFLNA異常症が疑われた症例については、遺伝子診断の同意が得られれば遺伝子解析を行う。以上により蓄積されたデータから本邦におけるFLNAの疫学およびその臨床像を明らかにし、FLNA異常症を疑う臨床的な特徴を明らかにし、診断基準を確立する。さらにFLNA異常症の臨床像を把握することにより、患者が必要としている医療福祉内容を明らかにし、治療ないし診療ガイドラインを立案する。並行してFLNA変異ノックインマウスおよび、疾患特異的iPS細胞を用いた病態解析を行う。特に遺伝子変異部のエキソンのスキップによりFLNAの機能改善効果が期待される変異に関してはDuchanne型筋ジストロフィーに用いられているエキソンスキップ誘導手法を導入し、本疾患の治療法としての有用性を検証する。さらに特異的治療法としてエキソンスキップ誘導を臨床にも導入すべく、その治療基盤整備を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究においてFLNA異常症の全国調査によって患者を集積し、集積した患者の遺伝子診断および変異遺伝子の機能解析において多くの研究費がかかると見積もられる。この全国調査は平成27年度より本格的に施行するため、平成26年度の研究費を平成27年度に配分する必要があった。
|
次年度使用額の使用計画 |
上記理由により、平成27年度より本格的にFLNA異常症の全国調査を行い、その遺伝子診断および変異遺伝子の機能解析を重点的に研究費を使用する。
|