研究課題/領域番号 |
26860797
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
齊藤 広幸 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (00723909)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 小児高悪性度神経膠腫 / 臨床研究 / WT1ペプチドワクチン / 免疫療法 |
研究実績の概要 |
「小児悪性神経膠腫再発例に対するWT1 カクテルワクチンを用いた免疫療法の有効性の検討」を臨床試験としておこなった。小児悪性脳腫瘍は小児がんにおいて、白血病に次いで頻度が高い。なかでも悪性神経膠腫は小児脳腫瘍の10%を占め、治療成績はこの20 年間でほとんど向上がみられず、初発例でさえ無増悪生存期間の中央値は12 か月であり再発例では6 か月の生存率は0%である。多くの小児がんが成人癌に比べて治療成績が良好であるが、神経膠腫再発例に対し、当科ではWT1 キラーペプチド単独治療をおこない5 例中2 例の長期生存例がえられ(3年以上)、再発脳幹グリオーマ2例においてもワクチン接種開始後意識レベルの改善、寝たきりが登校可能となるなど最終予後は不良であったが、QOLの改善と6か月以上の生存期間の延長がみられた。また有害事象はなく安全な治療法と考えられ、絶対予後不良の神経膠芽腫、脳幹グリオーマに対し有効と考えられた。また臨床試験参加症例のうち同意がえられた症例に おいて免疫モニタリングを行った。脳浮腫の予防としてステロイドが投与されていた3例においてもWT1特異的キラーT細胞の出現がみられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「小児悪性神経膠腫再発例に対するWT1 カクテルワクチンを用いた免疫療法の有効性の検討」はキラーペプチド単独によるワクチン効果を検討し、長期の有効性と安全性を確認することができた。またワクチン開始前にはみられなかったWT1特異的キラーT細胞のフェノタイプ解析をおこない、effector memory T細胞やcentral memory T細胞を検出することが可能となった。治療開始後12週間で増悪し中止した1例ではWT1特異的キラーT細胞をワクチン開始後においても検出することができなかった。またこのことからWT1ペプチドワクチン療法においてはメモリーT細胞の重要性が明らかになったためヘルパーペプチドを用いたヘルパーT細胞によるメモリーT細胞刺激作用を期待したキラーペプチド、ヘルパーペプチドによるカクテルワクチンを用いた臨床試験を開始することを計画している。
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今後の研究の推進方策 |
当初用いる予定としていたワクチンではなく、ヘルパー、キラーペプチドをカクテルしたワクチンへの変更にともない、第I相から再度行う必要があること、また倫理指針が「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」となったことから本倫理指針に沿った研究計画とする必要性がある。このため大幅な研究計画の変更が必要となった。また小児悪性神経膠腫におけるWT1蛋白の発現や他の免疫学的因子に関する検討が不十分であると考えられた。今後のWT1ペプチドワクチンを用いた悪性神経膠腫に対する臨床試験を考えるうえで、現在の5症例の解析を免疫学的に再度おこなうい、悪性神経膠腫における免疫学的な検討を網羅的におこなうこととした。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初用いる予定としていたワクチンではなく、ヘルパー、キラーペプチドをカクテルしたワクチンへの変更にともない、第I相から再度行う必要があること、また倫理指針が「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」となったため本倫理指針に沿った研究計画とする必要性が生じたことから新規臨床試験の開始にはモニタリング、監査などの体制が必要となり当初の計画の経費では困難であると予想した。このため現在施行中の臨床試験でえら得た血液、腫瘍検体を用いた網羅的免疫因子の発現を検討することとした。
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次年度使用額の使用計画 |
今後、臨床研究を開始するにあたり、小児悪性神経膠腫におけるWT1蛋白の発現頻度、発現強度の検索は、かならず必要となるため新規臨床研究を開始する前におこなうこととした。また今回登録された5例中、1例でWT1ペプチドワクチン開始後に再発しており外科的摘出術によって腫瘍組織が採取された。また患者代諾者より包括同意を取得している。現在「人を対象とする医学系研究に関する倫理指針」に基づいてあらたな「小児がんにおける網羅的免疫因子の解析」として疫学研究をおこない免疫因子の検討すなわち腫瘍でのWT1特異的キラーT細胞浸潤性や制御性T細胞、PL-1やPD-L1の発現を免疫染色を用いておこない、免疫学的見地から再発の原因を検索することとした。このことによりよい小児悪性神経膠腫に対する免疫的治療の開発につながると考えられる。このための抗体購入、遺伝子検索に使用する予定である。
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