目的:小児悪性神経膠腫再発例に対し、WT1 カクテルワクチンを用いた免疫療法の開発を目的としたがまずキラーペプチド単独によるワクチン効果を検討した。悪性神経膠腫(HGG)3例、脳幹グリオーマ(DIPG)2例が登録された。HGG3例中2例が再発後51カ月CRもしくはPRで生存している。DIPGの2例は再発後15カ月、7カ月腫瘍増大が抑えられ、最終生存期間は18カ月、8カ月であった。再発後のHGGの生存期間が5~30週、DIPGでは60日程度とされていることから期待できる結果であった。またワクチン開始前にはみられなかったWT1特異的キラーT細胞が出現し、そのフェノタイプ解析をおこなったところeffector memory T細胞やcentral memory T細胞を検出した。治療開始後12週間で増悪し中止した悪性神経膠腫の1例ではWT1特異的キラーT細胞を検出することができなかった。これらの当科の研究結果が企業へ技術移管されWT1カクテルワクチンとして小児悪性神経膠腫に対する企業治験が開始された。このため本研究では将来の免疫チェックポイント阻害剤との併用療法の開発や小児悪性神経膠腫の免疫状態を検討することとした。方法:5例中4例の接種開始後3~6月後の末梢血中の免疫制御因子の発現をフローサイトメトリー法により検討した。結果:CD4陽性リンパ球上のPD-1は2.3~3.7%、CD8陽性細胞上のPD-1は2.6~8.4%であった。再発例と寛解例では差異がなかった。全リンパ球中の割合は2.6~7%であった。再発例は3.2、7%とやや高い傾向にあった。このことから抗PD-1抗体や制御性T細胞を抑制する抗CCR4抗体は有効である可能性ありWT1ワクチンとこれらの免疫チェックポイント阻害剤の併用療法が期待できる治療法であると考えられた。
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