ダウン症候群ではその新生児の約10%が一過性骨髄増殖症(TAM)と呼ばれる前白血病状態を呈する。X染色体上にあるGATA-1への(short form産生型)突然変異と21番染色体のトリソミーが重要なファクターと考えられているが、これまでこの両者の作用を明確に区別しつつ、その相互作用を解析することのできる実験モデルがなかった。本研究では新規の遺伝子改変技術(TALE Nuclease)と染色体工学を組み合わせることで GATA-1 の遺伝子型(null / short form / full length)× 21番染色体 (ディプロイド / トリソミー)の6つの組み合わせのヒトiPS細胞を樹立し、同症の実験モデルを確立し、さらに各iPS細胞を血球系へと分化誘導することで、TAMの病態ならびに2つの因子のはたす役割を明らかにすることを目指している。 これまでの研究により、6種類のうち5種類のiPS細胞株を得ることができた。今年度はさらに、iPS細胞における数塩基置換を可能にするゲノム編集技術の確立を行い、最終的に目的の短縮型GATA1変異を有する21ダイソミーiPS細胞を得ることができた。これらの細胞をさらに分化誘導することで、TAMのさらに詳細なメカニズムが解明されると期待される。
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