研究課題
ダウン症候群ではその新生児の約10%が一過性骨髄異常増殖症(transient abnormal myelopoiesis;TAM)と呼ばれる前白血病状態を呈する。X染色体上にあるGATA-1への(short form産生型)突然変異と21番染色体のトリソミーが重要なファクターと考えられているが、これまでこの両者の作用を明確に区別しつつ、その相互作用を解析することのできる実験モデルがなかった。本研究ではゲノム編集技術であるTALE nucleaseおよびCRISPR/Cas9システム、さらに染色体工学を組み合わせることで GATA-1 【 null / short form / full length】× 21番染色体 【ディプロイド / トリソミー】の6つの組み合わせのヒトiPS細胞を樹立することを目指した。昨年度までの研究により、ヒトiPS細胞におけるゲノム編集技術を確立することができた。そして上述の6種類のiPS細胞を樹立した。さらに今年度は、21番染色体上において造血に重要な働きをすると考えられる4Mbの領域を推定し、これらを1アレル分のみ欠失した部分トリソミーiPS細胞の作成を行った。ヒトにおいてこのような大きな領域を欠失することに成功した報告はない。さらにこの細胞にGATA1短縮型変異を誘導することに成功した。これにより、TAMの詳細な病態解析を可能にする疾患モデル細胞の構築に成功した。これらの細胞を造血分化誘導する系を確立し、21トリソミーに造血亢進作用があることを明らかにした。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件)
Cell Reports
巻: 15 ページ: 1228-1241
http://dx.doi.org/10.1016/j.celrep.2016.04.031