研究課題
小児特発性ネフローゼ症候群(小児INS)は小児期における代表的な難治性腎疾患であり、その発症機序には以下の2つがあると考えられている。1.リンパ球により産生される血液中を循環する何らかの因子によりpodocyteが障害され、蛋白尿漏出防止機構が破綻するすることで発症する。2.podocyte関連蛋白を産生する遺伝子異常により発症する。上記1に関しては、患者血清を培養podocyteに添加する研究を行った。その結果、患者血清とともに培養した場合、小児INSの発症に大きく関係しているとされているnephrin、podocinなどのスリット膜関連蛋白が細胞膜表面に発現せず、そのほとんどが核周囲にとどまる現象を発見した。現在、マイクロRNAの発現につき解析を進めている。上記2に関して、これまで海外からはステロイド抵抗性ネフローゼ症候群においては約30%において遺伝子異常を認めることが示された。また、その場合、各種免疫抑制療法に抵抗性を示し末期腎不全へと進行する物の、移植後のネフローゼ症候群の再発を認めないことが示されている。しかし日本人におけるこれらの網羅的遺伝子診断体制は確立しておらず、その臨床像や遺伝子型は不明であった。私たちはこれまでに報告されている45種の遺伝子に関して次世代シークエンサーを用いた網羅的診断体制を確立し、これまで63家系において解析を行った、その結果、28%において原因遺伝子異常を同定し、それらの患者では治療抵抗性であることを明らかとした。今後、日本人における遺伝子異常を伴うステロイド抵抗性ネフローゼにおけるその全貌を明らかとしていく予定である。
すべて 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Eur J Hum Genet
巻: 24 ページ: 387-391
10.1038/ejhg.2015.113.
Clin Exp Nephrol
巻: 20 ページ: 253-257
10.1007/s10157-015-1160-9.