研究課題
神経芽腫は、小児がん死亡の約15%を占める代表的な小児難治性固形がんである。長期生存率が40%に満たないStage 4患者の予後改善は、現在の小児がん診療における緊急の課題である。Stage 4患者は半数以上が再発し予後不良だが、骨髄、皮膚、肝に限局した転移を示すStage 4S患者は自然消退し予後良好であり、Stage 4S患者の発症機構の理解は、神経芽腫発症・進展の制御に重要な役割を果たすと考えられる。そこで申請者は、神経芽腫Stage 4S患者の非腫瘍細胞における染色体転座部位t(1;10)(p22;q21)から単離された遺伝子Evi5に注目し、その神経芽腫の発症・進展における役割の解明を試みている。Evi5は、AKXDマウスのT細胞性リンパ腫におけるレトロウィルス挿入部位から同定された遺伝子で、TBCドメインを有するRabファミリー低分子量G蛋白質GTPase活性化蛋白質(TBC/Rab GAPs)のメンバーであるが、神経芽腫の発症・進展との関連は不明であった。神経芽腫細胞株BE(2)-C細胞からクローニングした新規アイソフォーム(Evi5-NB)が神経芽腫細胞に選択的な発現を示すことに基づいて、今年度はEvi5をノックダウンした神経芽腫BE(2)-C細胞を用いて、スフェア形成能、コロニー形成能、免疫不全マウスにおける腫瘍形成能の解析を行った。その結果、Evi5の発現抑制神経芽腫細胞では、スフェア形成能、コロニー形成能、免疫不全マウスにおける腫瘍形成能とも低下することを明らかにした。
2: おおむね順調に進展している
本研究は、神経芽腫発症・進展の分子機構の解明を目指して、神経芽腫細胞におけるEvi5の作用機構の解明を試みている。これまでに、Evi5が神経芽腫細胞のスフェア形成能、コロニー形成能、免疫不全マウスにおける腫瘍形成能に関わることを明らかにし、その作用機構の解析がおおむね期待通りに進行している。
Evi5による神経芽腫発症・進展の分子機構を明らかにする目的で、Evi5が標的とするRabのメンバーの同定、およびEvi5の上流/下流シグナルの同定を行なっていく予定である。
昨年度は、予定していた実験を一部開始できなかったため、一般試薬および培養試薬の使用量が当初の計画を若干下回ってしまった。
今年度は、Evi5が標的とするRabのメンバーの同定、およびEvi5の上流/下流シグナルの同定に全力を注ぐ予定である。
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Int J Oncol
巻: 46 ページ: 1089-1098
10.3892/ijo.2014.2801