研究実績の概要 |
昨年に引き続き、STAT3のDN変異体を全身に発現する高IgE症候群モデルマウス(STAT3-DNマウス)を用いて、高IgE症候群患者でみられる黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus)に対する易感染性の病態形成メカニズムの解明を試みた。具体的には、STAT3-DNマウスの皮膚にS. aureus, 表皮ブドウ球菌(S. epidermidis), 化膿連鎖球菌(Streptococcus pyogenes)を接種し、接種部皮膚に形成される病巣の肉眼的大きさを計測し、さらに皮膚ホモジネート液を作製後、コロニー数を計測した。その結果、S. epidermidis またはS. pyogenes 接種時には、病巣の大きさ、コロニー数ともに、野生型(WT)マウスとSTAT3-DNマウスとで有意差は認められなかったが、S. aureus接種時には、WTマウスと比較してSTAT3-DNマウスにおいて、感染病巣の増大化が見られ、接種7日後の接種部位での検出菌数の増加がみられた。さらに、S. aureus接種部位での好中球遊走因子(Cxcl1,Cxcl2)の産生低下と、それに伴う好中球浸潤数の減少が観察されるとともに、CD3+TCRγδ+細胞とCD3+CD4+細胞からのIL-17A産生低下が見られた。S. aureusに対する易感染性が成立するためには、全身にSTAT3のDN変異体が発現する必要があるのか、それとも特定の細胞に発現すれば病態が成立するのかを解析するために、好中球特異的、またはケラチノサイト特異的STAT3-DNマウスにS. aureusを接種したが、WTマウスと比較して、両者とも感染病巣の増大化は見られず、また接種7日後の接種部位での検出菌数の増加も認められなかった。
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