研究実績の概要 |
質量分析計を用いて、前年度に見つけた川崎病特異的物質 (m/z 1531.8, 1414.3, 790.9, 779.8, 695.0, 1171.4, 1169.4, 906.8, 695.0, 667.4, 619.4, 409.3)に関し、バイオフィルムとの関連を調べた。すると、B. cereus, B. subtilis, Y. pseudotuberculosis由来のバイオフィルムから抽出した脂溶性成分からも同一物質が検出された。また川崎病患者自身から採取したバイオフィルム (鼻腔・舌・歯表面・便)からも一部に同一物質が検出され、川崎病発症とバイオフィルムとの関連が示唆された。更には、B. cereus, B. subtilis, Y. pseudotuberculosisを含む川崎病との関連が言われている菌を用い形成したバイオフィルム、その抽出物の脂溶性成分でヒト冠動脈内皮細胞 (HCAEC)を刺激すると、有意に多くの炎症性サイトカイン (IL-6, IL-8)を産生した。またその炎症性サイトカインは、バイオフィルム形成の際に培地にバターを入れることで有意に増加した。尚、上記の川崎病特異的物質と臨床所見もしくは血液検査データ、並びに冠動脈病変形成には有意な関連を見いだせなかった。 上記より、川崎病発症には宿主に栄養状態や温度等、バイオフィルム形成等に関する何らかの至適条件があり、そしてそこから産生されるMAMPs (microbe-associated molecular patterns)による自然免疫受容体を介する経路の関与が考えられる。
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