研究課題/領域番号 |
26860814
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研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
上野 健太郎 鹿児島大学, 医学部・歯学部附属病院, 助教 (20644892)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 川崎病 / 血管炎 / 細胞傷害 / 細胞生存 / アポトーシス / 免疫グロブリン / ステロイド |
研究実績の概要 |
【目的】川崎病冠動脈後遺症発症のメカニズムを解明する目的で、川崎病患児血清を添加し刺激した正常ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を用いて細胞傷害や細胞死、細胞生存に関与するシグナル伝達物質を解析し、川崎病血管炎における免疫グロブリン製剤(IG)、ステロイド製剤投与のメカニズムを解明する。【方法】川崎病(KD)患児42例、有熱性細菌感染患児10例の血清を用いた。HUVEC(第3継代)に12.5%患者血清を用いて24時間刺激を行った。次に刺激された細胞を薬剤非投与群、プレドニン投与群(PSL)、免疫グロブリン投与群(IG)、プレドニン+免疫グロブリン投与群(PSL+IG)の4群に分類し更に24時間培養した。細胞の生細胞率はMTT assay、CytotoxicityはMultiTox-Fluor Multiplex Cytotoxicity AssayとHMGB-1の測定、細胞のアポトーシスは蛍光光度計と電子顕微鏡を用いたCaspase-3/7活性、細胞生存シグナルはAktのリン酸化をウェスタンブロット法で測定した。【結果】患者背景に差はなく、血清Na値に有意差を認めた。MTT assayでは川崎病患児血清で刺激した群で有意に生細胞が減少していた(P<0.001)。Caspase 3/7活性ははPSL単独では薬剤非投与群と比較して差はなく、IG群で有意に抑制された(P<0.001)。電子顕微鏡での評価も同所見であった。Cytotoxicityも同様にIG群及びPSL+IG群で有意に抑制され、冠動脈後遺症と有意な正の相関が得られた(P<0.001)。Aktに関してはIG群及びPSL+IG群で有意にリン酸化が促進された。【考案】川崎病血管炎における細胞の生存と傷害、細胞死に関する検討では、免疫グロブリンは細胞生存に働き、細胞傷害、アポトーシスを抑制する効果があると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の計画として、① 血清サイトカインの評価、② 培養細胞の生細胞率、細胞傷害、アポトーシスの評価及び解析、③ 細胞内伝達シグナル(Akt、Aktリン酸化)の評価、④ 細胞外器質への影響、をあげており、平成27年度の計画として、⑤免疫グロブリン製剤、プレドニゾロンの影響の評価をあげていた。平成26年度計画の①~④は各実験において最低3回以上の確認をすることができており、各実験において一定の結果を得ることができた。また⑤に関しても実験を早めて進めており、現在3回目の実験で再現性を確認している最中である。平成27年度は①~⑤の結果を元にデータを解析し、追加実験を行い研究発表、論文作成へと進めていく予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の計画として、① 血清サイトカインの評価、② 培養細胞の生細胞率、細胞傷害、アポトーシスの評価及び解析、③ 細胞内伝達シグナル(Akt、Aktリン酸化)の評価、④ 細胞外器質への影響、をあげており、平成27年度の計画として、⑤免疫グロブリン製剤、プレドニゾロンの影響の評価をあげていた。各実験結果から免疫グロブリン特有の効能を更に進めるために、アルブミン製剤での比較実験、プレドニンに関しては薬剤非投与群、プレドニン投与群(PSL)、免疫グロブリン投与群(IG)、プレドニン+免疫グロブリン投与群(PSL+IG)の4群での前後でのサイトカイン(IL-6、IL1-β)の測定を行う予定である。各実験で得られたデータと臨床データを比較し、関連性について検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験が概ね計画通りに進み、再現性を確認するための複数回の実験も滞りなく進んだため、消耗品や各種試薬の購入を最小限に抑えることができた。
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次年度使用額の使用計画 |
実施計画書に沿って進めているが、実験結果を更に追求するため次年度使用額で増えた分は、追加実験として使用する。具体的には、免疫グロブリン特有の効能を更に進めるために、アルブミン製剤での比較実験、プレドニンに関しては薬剤非投与群、プレドニン投与群(PSL)、免疫グロブリン投与群(IG)、プレドニン+免疫グロブリン投与群(PSL+IG)の4群でのNFκBの評価を行う予定である。
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