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2014 年度 実施状況報告書

乳児期発症てんかん性脳症を引き起こすアミノアシルtRNA合成酵素変異の同定と解析

研究課題

研究課題/領域番号 26860816
研究機関横浜市立大学

研究代表者

小寺 啓文  横浜市立大学, 医学(系)研究科(研究院), 客員研究員 (70637884)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2016-03-31
キーワードてんかん性脳症 / 全エクソーム解析 / QARS / アミノアシルtRNA合成酵素 / アミノアシル化
研究実績の概要

平成26年度の研究で、全エクソーム解析を用いることにより、乳児期発症てんかん性脳症1家系(兄弟例)から、アミノアシルtRNA合成酵素遺伝子の一種であるQARSの複合ヘテロ接合性変異 [c.169T>C (p.Y57H) および c.1485dup (p.K496*)] を同定した。

乳児期発症のてんかん性脳症は、難治性のてんかん発作に加えて精神運動発達遅滞を呈する疾患群である。これまでに、イオンチャネル遺伝子、シナプス小胞調節遺伝子、3量体G蛋白質遺伝子や糖ヌクレオチドトランスポーター遺伝子の異常等が見つかっているが、全体の3割程度を説明するに留まっていた。本研究によるQARSの同定は、アミノアシルtRNA合成異常が関与する、てんかんの新しい発症機序の存在を示唆するものであった。

変異が病的であるか評価を行うため、同定された変異をもとにした組換えタンパク質を作成し神経細胞内発現解析を行った。Neuro2A細胞内においてAcGFP1-tagを付加したQARS変異体を一過性に発現させたところ、p.K496*変異体では細胞内における分解が観察されたものの、p.Y57H変異体では野生型との間に局在の違いを認めなかった。そのため、生化学的に酵素活性の違いを比較するため、放射性同位体を用いたアミノアシル化活性測定に取りかかった。しかしながら、アメリカのグループにより、QARS変異が進行性小頭症および難治性てんかんの原因であるとの報告がなされたため、それまでに得られた実験データを詳細な臨床所見と併せ、すぐにセカンドレポートとして報告した(Kodera et al., J Hum Genet 2014)。我々の報告した1家系とアメリカのグループが報告した2家系を併せて考えると、QARS変異によって、髄鞘低形成および白質異常が引き起こされると考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

これまでに100例を超える乳児期発症てんかん性脳症のExome解析を通じて、3家系において常染色体劣性遺伝形式をとる3種のアミノアシルtRNA合成酵素遺伝子変異を同定してきた。そして、まずその中の1種であるQARS変異について変異タンパク質の機能解析を用いた病的意義の評価を行い、論文報告まで行うことができた(Kodera et al., J Hum Genet 2014)。また、平成26年度では、当初の予想を超える200症例以上の新規てんかん性脳症検体の受け入れができており、今後の研究においても、アミノアシルtRNA合成酵素遺伝子変異のスクリーニングが効率良くできる基盤を構築することができた。

今後の研究の推進方策

平成27年度においても、Exome解析による病的変異の網羅的スクリーニング、動物細胞を用いた発現解析および生化学的活性測定を引き続き行う。Exome解析によって見つかってきたアミノアシルtRNA合成酵素遺伝子変異を、機能解析系に順次追加し、アミノアシルtRNA合成酵素遺伝子変異がもたらす病態解明に努める。

次年度使用額が生じた理由

我々は3種のアミノアシルtRNA合成酵素遺伝子変異をまとめて論文報告することを目標としていたが、その中の1種であるQARSがアメリカのグループに先に論文投稿された。そのため、研究方針を変更し、まずはQARS遺伝子変異単独で研究をまとめて論文報告を行った。他の2種のアミノアシルtRNA合成酵素遺伝子変異については、QARSの論文をまとめている間は機能解析等を一時中断させていたため、それらの実験にかかると予想されていた金額が繰越金として生じた。

次年度使用額の使用計画

繰越金は、主に、同定済みの2種のアミノアシルtRNA合成酵素遺伝子変異に対する機能解析、そして、新規に受け入れたてんかん性脳症検体のエクソンキャプチャー試薬の購入に充当する予定である。また、論文発表、学会(国内、海外)での発表費用として使用する予定である。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2015 2014

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] Mutations in COG2 encoding a subunit of the conserved oligomeric golgi complex cause a congenital disorder of glycosylation.2015

    • 著者名/発表者名
      Kodera H, Ando N, Yuasa I, Wada Y, Tsurusaki Y, Nakashima M, Miyake N, Saitoh S, Matsumoto N, Saitsu H.
    • 雑誌名

      Clinical Genetics

      巻: 87 ページ: 455-460

    • DOI

      10.1111/cge.12417

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Mutations in the glutaminyl-tRNA synthetase gene cause early-onset epileptic encephalopathy.2014

    • 著者名/発表者名
      Kodera H, Osaka H, Iai M, Aida N, Yamashita A, Tsurusaki Y, Nakashima M, Miyake N, Saitsu H, Matsumoto N.
    • 雑誌名

      Journal of Human Genetics

      巻: 60 ページ: 97-101

    • DOI

      10.1038/jhg.2014.103

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] De novo SOX11 mutations cause Coffin-Siris syndrome.2014

    • 著者名/発表者名
      Tsurusaki Y, Koshimizu E, Ohashi H, Phadke S, Kou I, Shiina M, Suzuki T, Okamoto N, Imamura S, Yamashita M, Watanabe S, Yoshiura K, Kodera H, Miyatake S, Nakashima M, Saitsu H, Ogata K, Ikegawa S, Miyake N, Matsumoto N.
    • 雑誌名

      Nature Communications

      巻: 5 ページ: -

    • DOI

      10.1038/ncomms5011

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] PIGO mutations in intractable epilepsy and severe developmental delay with mild elevation of alkaline phosphatase levels.2014

    • 著者名/発表者名
      Nakamura K, Osaka H, Murakami Y, Anzai R, Nishiyama K, Kodera H, Nakashima M, Tsurusaki Y, Miyake N, Kinoshita T, Matsumoto N, Saitsu H.
    • 雑誌名

      Epilepsia

      巻: 55 ページ: e13-e17

    • DOI

      10.1111/epi.12508

    • 査読あり
  • [雑誌論文] AKT3 and PIK3R2 mutations in two patients with megalencephaly-related syndromes: MCAP and MPPH.2014

    • 著者名/発表者名
      Nakamura K, Kato M, Tohyama J, Shiohama T, Hayasaka K, Nishiyama K, Kodera H, Nakashima M, Tsurusaki Y, Miyake N, Matsumoto N, Saitsu H.
    • 雑誌名

      Clinical Genetics

      巻: 85 ページ: 396-398

    • DOI

      10.1111/cge.12188

    • 査読あり
  • [学会発表] 先天性糖鎖合成異常症の新規原因遺伝子COG2の同定2014

    • 著者名/発表者名
      小寺啓文、安藤直樹、湯浅勲、和田芳直、鶴崎美徳、中島光子、三宅紀子、齋藤伸治、松本直通、才津浩智
    • 学会等名
      第59回日本人類遺伝学会
    • 発表場所
      タワーホール船堀(東京都江戸川区)
    • 年月日
      2014-11-19 – 2014-11-22
  • [学会発表] Mutations in COG2 encoding a subunit of the conserved oligomeric golgi complex cause a congenital disorder of glycosylation2014

    • 著者名/発表者名
      Kodera H, Ando N, Yuasa I, Wada Y, Tsurusaki Y, Nakashima M, Miyake N, Saitoh S, Matsumoto N, Saitsu H.
    • 学会等名
      The American Society of Human Genetics 64th Annual Meeting
    • 発表場所
      San Diego, CA, USA
    • 年月日
      2014-10-18 – 2014-10-22

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公開日: 2016-06-01  

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