平成26年度は花粉飛散前後の患者血液(全36検体:治療群8例、コントロール群10例)から末梢血単核球を分離し、凍結保存した。平成27年度はこれらの細胞に対してマルチカラーフローサイトメトリーによる抗原特異的Th細胞解析を行ない、舌下免疫療法により、スギ花粉飛散前後にIL-4あるいはIL-5を産生するスギ特異的Th細胞数の増加を抑制することを明らかにした(Nomura T. Ann Allergy Asthma Immunol 2016)。平成28年度は、これらの成果を発展させる形で、そのメカニズムの一環としてのマイクロRNAの働きに注目した。現時点でマイクロRNAの公開データベースに登録される、ヒトのマイクロRNAは2500種類を超えるため、次世代シーケンサーあるいはマイクロアレイにより血清中のマイクロRNAの網羅的な半定量解析を行うこととした。次世代シーケンサーによる解析は、血清中に微量に存在するマイクロRNAの解析は技術的に困難であった。マイクロアレイによる解析では、治療群とコントロール群で発現プロファイルの異なる42種類のマイクロRNAを免疫療法に関与する候補因子として絞り込むことができた。過去の報告からアレルギー性鼻炎の病態に関わるとされ、我々のスクリーニングと重複しない21種類のマイクロRNAを含めて、63種類のマイクロRNAを今後の定量評価の対象と考えた。今後は、本研究で絞り込まれたマイクロRNAの詳細な検討を行い、引き続き免疫療法の作用機序を明らかにしていく予定である。
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