研究課題
先天性ピリミジン代謝異常症の臨床像は多様であり、5FU関連抗癌剤の副作用を呈することが知られているが、未だ報告数に乏しく発症頻度や遺伝子変異等の詳細は不明でさらなる症例の蓄積が必要とされている。我々はUPLC-MS/MSを用いた尿中ピリミジン代謝物濃度の網羅的定量法を確立し、遺伝子検査による確定診断のシステムを構築した。自施設と関連施設において精神運動発達遅滞、けいれん、自閉症などの神経症状を有する児に対して尿を用いたハイリスクスクリーニングを施行した。また国内外の他施設でGC/MS/MS等によるメタボロミクス解析にて本疾患を疑われた症例の遺伝子診断を引き受けた。研究期間中に尿中ピリミジン分析を施行した症例は142例、他施設でスクリーニングされ遺伝子検査依頼があった症例は、β-ウレイドプロピオナーゼ(βUP)欠損症34例(うち日本人14例)、ジヒドロピリミジナーゼ欠損症6例(うち日本人3例)、ジヒドロピリミジンデヒドロゲナーゼ欠損症1例であった。本国以外の症例はマレーシアの1症例を除きすべて中国人症例だった。解析の結果、βUP欠損症では全症例でUPB1遺伝子R326Q変異を有しており、70%以上の症例は同変異のホモ変異であった。健常人の検討では日本人のR326Qの保因者率は2%であった。DHP欠損症は全例コンパウンドヘテロ変異であり6例中3例で1アリルにDPYS遺伝子Q334Rを認め、比較的高頻度変異と考えられた。DPD欠損症は尿中ピリミジン分析では疾患パターンを示したが、遺伝子変異は検出されず確定診断には至らなかった。ハイリスクスクリーニングでは本疾患を発見することはできなかったが、これまでのデータより疾患頻度は1万人に1人以下と考えられるため検体数の不足が原因と考えられる。今後も継続的に疑い症例の尿スクリーニングを施行していく予定である。
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Int J Mol Sci.
巻: 17(1) ページ: 86-8
10.3390/ijms17010086.