研究課題/領域番号 |
26860819
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研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
宮地 充 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40584983)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 横紋筋肉腫 / HMGA2 / netropsin |
研究実績の概要 |
HMGA2遺伝子は、様々ながん腫、肉腫でがん遺伝子として働くことが証明されており、一方で正常組織での発現は胎児期に限られている。したがって、HMGA2遺伝子を阻害することにより、悪性腫瘍の増殖を阻害し、かつ、副作用の少ない治療が可能であると予想される。本検討でHMGA2高発現腫瘍のモデルとする胎児型横紋筋肉腫は、小児で最も頻度の高い軟部悪性腫瘍で、組織型は胎児型(ERMS)と胞巣型(ARMS)に大別される。近年、HMGA2遺伝子はERMSにおいて発現が高く、また核内での免疫染色陽性所見はERMSに特異的で、病理組織学的にARMSとの鑑別診断に有用であることが明らかとなった(Davicioni E, et al. 2009)。 以上の背景より、我々は、HMGA2がERMSの造腫瘍性や増殖、分化の阻害に関与していると仮定し、ERMSをHMGA2高発現腫瘍のモデルとして、HMGA2の機能解析を行い、以下を明らかにした。1.HMGA2強制発現により筋芽細胞株が造腫瘍性を獲得する。2.HMGA2ノックダウンにより横紋筋肉腫の分化が促進される。3.ERMSにおいて、HMGA2ノックダウンにより増殖抑制とG1期細胞周期停止を引き起こす。 さらに、HMGA2阻害剤であるnetropsinのin vitroでの増殖に及ぼす影響について検討を行ったところ、RD、RMS-YM、Rh18細胞株において、IC50が148、158、87microMであった。またヌードマウスのERMS細胞株の異種移植腫瘍に対し、netropsinは用量依存的に抗腫瘍効果を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、以下の項目の検討を予定している。 ①HMGA2阻害剤による遺伝子発現プロファイルの変化、②HMGA2阻害剤によるHMGA2分子とDNAの結合の阻害の検証、③ERMSにおけるHMGA2阻害剤のin vitroでの増殖、分化に及ぼす影響、④ERMSにおけるHMGA2阻害剤のmouse xenograft modelでの増殖に及ぼす影響。 現在、①③④の検討の一部を終了しており、概ね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本検討では、胎児型横紋筋肉腫をHMGA2高発現腫瘍のモデルとして、HMGA2とDNAの結合を阻害する抗生物質であるnetropsinの抗腫瘍効果を検討し、HMGA2阻害剤を臨床応用することを最終目標とする。これまでの検討から胎児型横紋筋肉腫におけるnetropsinの抗腫瘍効果はあると考えられ、この抗腫瘍効果がnetropsinによるHMGA2とDNAの結合阻害に由来するものかの検討が必要であり、今後、これを中心に検討を進める。
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