研究課題
我々は、T細胞性急性リンパ性白血病(T-ALL)の中でも予後不良な亜群とされるearly T cell predursor ALL (ETP-ALL)において、造血細胞の転写制御因子であるMEF2Cの発現が高いことを見出した。MEF2Cはアポトーシス抑制蛋白であるBCL2の機能を増強することが知られているが、我々は、ETP-ALL細胞がBCL2に依存して、アポトーシスを抑制しており、その結果、ステロイドや各種抗がん剤に抵抗性である可能性が高いと考えた。そこで、BCL2阻害剤がETP-ALL細胞の細胞死を誘導することができるかを細胞株と患者検体を用いて検討した。まず、ヒト白血病細胞株を用いた検討で、BCL2阻害剤(ABT-737)は、ETP-ALL細胞株(LOUCY)に対して高い感受性を示し、ステロイド抵抗性であるLOUCYのステロイド感受性を回復することを明らかにした。また、マウス白血病細胞株であるBaF3細胞株にMEF2Cをレトロウイルスベクターを用いて高発現させた細胞株を作成し、同様の検討を行ったところ、MEF2C高発現細胞株ではABT-737に対する感受性が亢進し、ステロイド感受性を増強することが確認できた。最後に、ステロイド抵抗性のETP-ALL患者の白血病細胞をマウスの骨髄間葉系細胞上に共培養する系を用いて検討した結果、ABT-737はETP-ALL患者の白血病細胞のステロイド感受性を増強することが明らかとなった。以上の結果から、ステロイド抵抗性のETP-ALLにおいて、BCL2阻害剤は、ステロイド感受性を改善することが明らかとなり、有用な治療薬剤となりうることが示唆された。
すべて 2015
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PLoS One.
巻: 10 ページ: e0132926
10.1371/journal.pone.0132926