研究実績の概要 |
ガンマグロブリン静注療法(IVIG)に抵抗性の難治性川崎病に対して、当教室のSuzukiらはシクロスポリンA(CsA)が有効であるとの報告(Pediatr Infect Dis J.30(10):871-6,2011)を行い、CsA による良好な治療成績をおさめている。一方で、川崎病の病因、病態は未解明な点が多く、IVIG 抵抗性の川崎病に対してCsA がどのような免疫応答をもたらしているか不明である。本研究は、IVIG が無効な難治性川崎病罹患児の末梢血を用いて、CsA を使用した際の免疫担当細胞の細胞内シグナル伝達物質(STAT1,3,5, NFATなど)の活性化、および遺伝子発現量を測定し、IVIG 施行時とCsA 投与時の相違を比較解析することで、難治性川崎病の病態を明らかにすることを目的としている。 2014年4月から当院に川崎病で入院した患児から、入院時及び、ガンマグロブリン静注療法(IVIG)施行の前後、シクロスポリンA(CsA)内服療法の前後に末梢血検体を得た。これらの検体から、フローサイトメトリー(FACS)を用いて、好中球、リンパ球において、細胞内シグナル伝達物質であるpSTAT1, pSTAT3, pSTAT5の平均蛍光強度(MFI)を測定した。同時に末梢血検体からRNAを抽出し、realtime RT PCR法を用いて、IL2, IL4, IL6, IL10, p38, CD177, IFNG, NFATc1, NFATc2, STAT3, STAT5, SOCS3, CISHのRNAの半定量的測定を行った。この1年間で、当初の計画にほぼ沿った形で、検体数を獲得することができている。現時点では、統計解析を行うには至っていないが、2015年度も継続して症例数を増やし、最終的な統計解析をめざすことが妥当であると考えた。
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