研究実績の概要 |
当院で入院加療を行った川崎病患児から、ガンマグロブリン静注療法(IVIG)施行の前後、シクロスポリンA(CsA)内服療法の前後に末梢血検体を得た。これらの検体から、フローサイトメトリー(FACS)を用いて、好中球、リンパ球において、細胞内シグナル伝達物質であるpSTAT1, pSTAT3, pSTAT5の平均蛍光強度(MFI)を測定した。同時に末梢血検体からRNAを抽出し、realtime RT PCR法で、IL2, IL4, IL6, IL10, p38, CD177, IFNG, NFATc1, NFATc2, STAT3, STAT5, SOCS3, PRV1のRNAの半定量的測定を行った。 2014年4月から2015年度で、計画通りの検体数を獲得することができ、FACSの検討で、CsA投与症例群(CsA群)で、pSTAT3(CD3+, CD16b+)のMFIが共に有意に低下した。また、初回IVIG奏功群(1st群)で、IVIG投与後に、pSTAT3(CD3+, CD16b+)のMFIが低下し、pSTAT5(CD16b+)のMFIが上昇した。1st群と追加IVIG奏功群(2nd群)の比較で、初回IVIG後、1st群でNFATc1発現量が高値であった。 realtime RT PCR法を用いた検討で、CsA投与後にNFATc1, c2, IFNγ, IL4の遺伝子発現量が有意に上昇し、PRV1, SOCS3のRNA発現量が低下した。また、1st群で、IVIG投与後にSTAT3, 5A, 5Bの遺伝子発現量が低下し、NFATc1, NFATc2の発現量が上昇していた。また、1st群と2nd群の初回IVIG投与後の比較で、PRV1, SOCS3, IL10, p38, STAT3は前者で有意に低値、NFATc1は前者で有意に高値であった。 JAK-STAT経路、NFAT経路が、川崎病の急性期治療時の免疫応答に関与していることが示唆された。
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