研究課題
昨年度の研究結果から、極早産児(VP;在胎32週未満、出生体重1500g未満)の社会的なシーンの視方は一様ではなく、定型発達(TD)群に近い群(VPlow群)と自閉症スペクトラム(ASD)群に近い群(VPhigh群)に大別されることが明らかとなった。今年度は、フレームごとの注視点の解析を行い、相違点を検討した。その結果、1)全編を通した登場人物の顔への注視率が、VPhigh群はASD群同様にVPlowとTD群比較して有意に低い。2)開始当初はVPhigh群も中心人物の顔を選択的に注視するが、注意の持続ができず1秒後以降でTD群とVPlow群より有意に注視率が低下した。以上より、極早産児の中で、登場人物の顔をみる率が低くASD群に近い社会的認知を呈する一群がいたが、その背景に注意喚起の障害も影響している可能性が示唆された。さらに今年度は、年齢ごとの変化を検討するために対象年齢を1-2歳までの第1群(含VP群21名)と3-4歳までの第2群(含VP群19名)に分けて同様の解析を行った。本解析においては対象となるVP群の人数が少数であったためクラスター解析は施行していない。定型的な視方からのかい離を表すMDS距離は、第1群、第2群ともにASD群で他群と比較して有意に高値であった。顔への注視率は、両群においてASD、VP、TDの順に高くなった。また顔の中の目を見る率は両群においてVP群で最も低く、反対に顔の中の口を視る率は両群でVP群が最も高い結果となった。本検討では、いずれの年齢においてもASD群は他群と比較して異なる視方を呈し、VP群もTD群と相同の視方ではないこと、またVP群は顔の中で目ではなく口をみる率が高く、特に年齢が低い群においてその傾向が高いことが明らかとなった。以上の検討の結果は、極早産児における社会的認知機能や社会性の問題の背景を考える上で有用な所見であり、今後これらの結果と他の行動情緒尺度を合わせて検討を重ねていく予定である。
2: おおむね順調に進展している
昨年度の予備解析の結果を受け、今年度はkey age(修正18か月、暦36か月)における評価を行った。しかし、対象となる当院外来でフォローする極早産児の人数が予定よりも少なかったため、対象者が少ない結果となっている。
予備的調査の結果では、極早産児を社会的なシーンの視方で社会性の問題のハイリスク群とローリスク群とに分けることができる可能性が示唆された。今後視線計測の結果と他の行動情緒尺度を組み合わせて検討をしていく。また、極早産児における社会的認知機能の年齢的な変化を検討するために同一人物における経時的評価を追加していく予定である。
検査用具などの消耗品の消費が予定よりも少なかったため繰越金が発生した。
検査用品の購入のために使用する予定である。
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