研究課題
本研究では、極早産児の社会的認知機能の発達的変化を評価することを目的とし、極早産児(在胎32週以下、出生体重1500g以下)47名を対象とし、視線計測を用いて社会的なシーンの視方を自閉スペクトラム症群(ASD群)と定型発達群(TD群)各25名とで比較した。昨年までの研究の結果、極早産児の中で登場人物の顔をみる率が低くASD群に近い社会的認知を呈する一群がおり、また注意喚起の障害が極早産児の視方に影響を及ぼしている可能性が示唆された(Sekigawa-Hosozawa,Brain Dev.,2017)。今年度は、極早産児の社会的認知機能と注意喚起障害を含む実行機能との関連を検討することを目的とし、知的障害を伴わない極早産児32名(平均在胎週数28週、平均出生体重1000g、平均検査時月齢89カ月)における1)心の理論検査通過率のASD群・TD群との比較、2)極早産児群における心の理論検査通過率と全般的認知機能及び日本版DN-CAS認知評価システム(DN-CAS)との相関を検討した。その結果、極早産児における心の理論検査の通過率は、年齢をマッチさせた知的障害を伴わないASD群と有意差がなく、先行文献(藤野.東京学芸大学紀要.2013)の同年代定型発達群よりも低い結果となった。さらに、極早産児においては、心の理論通過率は全般的認知発達指数、年齢、及びDN-CASの「全体指数」と「単語の記憶」との相関を認めた。以上より、知的障害を有さない極早産児においても心の理論の獲得に遅れを認め、極早産児における社会性の問題の認知的背景をとなっている可能性が示唆された。さらに、極早産児における社会的認知機能の問題には、全般的認知発達やワーキングメモリーが関連している可能性が考えらえた。
2: おおむね順調に進展している
視線計測の結果から得られた知見をもとに、既存の他の検査バッテリー(心の理論課題)を用いて極早産児における社会的認知機能と実行機能との関連について検討し、課題を発展させた。
今後は、視線計測を用いて極早産児における社会的認知機能の経年齢的変化について検討を加えるとともに、実行機能と社会的認知機能との関連について症例数を増やし、更なる検討を行う予定である。
消耗品(知能検査道具)の購入が予定よりも少なかったため。
追加検査分の消耗品(質問紙や知能検査道具)の購入、研究成果の発表を行うための学会参加費用、論文出版費用
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (3件)
Brain and Development
巻: 39 ページ: 218~224
doi:10.1016/j.braindev.2016.10.001
Early Human Development
巻: 98 ページ: 23-27
doi.org/10.1016/j.earlhumdev.2016.05.001