本研究では、早産児の社会的認知機能の発達と社会性の問題との関連を検討することを目的としている。近年、超早産または超低出生体重児において社会性の問題の頻度が高いことが報告されていることから、今年度は早産児群を超低出生体重児(出生体重1000g未満)、極低出生体重児(出生体重1000-1500g未満)に分類し、それぞれの特徴を詳細に把握することを目的とした。【対象】当院に通院している超低出生体重児25人[平均月齢94±21か月、平均在胎週数27±2週、平均出生体重736±149g]、極低出生体重児群19人[平均月齢91±18か月]、周産期異常を有さない自閉スペクトラム(ASD)群21人[平均月齢105±21か月]と正期産出生の定型発達(TD)群18人[平均月齢96±22か月]を対象とした。いずれの群においても知的障害を有する児及び既知の先天異常を有する児は除外した。【方法】アニメーション版心の理論課題ver.2(DIK教育出版)の正答率を群間比較。保護者によるSocial Difficulties Questionnaire(SDQ)評価、周産期因子と正答数の関連を検討した。【結果】心の理論平均正答数は、超低出生体重児群2.0±1.6、ASD群2.3±1.5、極低出生体重児群2.7±1.4、TD群3.4±1.1の順に増加し、TD群に比して超低出生体重児群とASD群が有意に低値であった。超低出生体重児において正答数は、年齢、全般的認知発達指数、出生体重との間に有意な相関を認めた。SDQとは相関を認めなかった。【考察】知的障害を有さない超低出生体重児においても、定型発達児に比して心の理論の獲得に遅れを認めた。また超低出生体重児における心の理論の発達は、年齢、全般的認知発達、そして出生体重と相関を認めた。今後、経年齢変化や実生活上の問題との関連について検討を重ねていく必要がある。
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