先天性心疾患(CHD: Congenital Heart Disease)に対する外科手術、術後ケアの著しい進歩にもかかわらず、手術後の急性腎傷害(AKI: Acute Kidney Injury)の割合は32.8%にものぼる。さらに術後にAKIを合併した場合、その死亡率は20-79%と非常に高いとされている。我々はCHD術後のAKI発症率、およびその独立危険因子をH26年度に報告した。そして、H28年度にその後2年間の追跡調査を終えたため、死亡率の検討、およびAKI合併群における死亡への寄与因子の同定を試みた。 【対象と方法】 2007年4月から2013年8月までの6年間に当院においてCHDに対して手術を施行された418例を前方視的に2年間追跡調査した。2年間における死亡率を調査し、さらにAKIを合併した104例 (男児68例、女児34例) を死亡群、生存群に分けて死亡率に寄与する因子の同定を試みた。 【結果】 104例中、23例 (22%) が2年間の間に死亡しており、術後から死亡までの平均期間は170日間であった。死亡率は明らかに非AKI群に比してAKI群で高率であり、術後のAKIがその後の死亡率に寄与していることが判明した。また、術後AKI合併群をさらに死亡群、生存群に分けて死亡の独立危険因子の同定を試みたが、性別、年齢、基礎疾患の有無、Risk Adjusted Classification of Congenital Heart Surgery score(RSCHS-1)、人工心肺の使用率、術中の阻血時間の存在の有無、いずれにも有意差は認められなかった。本検討によって、死亡率は明らかに非AKI群に比してAKI群で高率であり、術後のAKIがその後の死亡率に寄与していることが判明した。また、術後AKI合併群における死亡率増加の独立危険因子の同定には至らなかった。
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