研究実績の概要 |
脊髄性筋萎縮症(SMA)は全身の筋力低下を示す進行性の遺伝性筋萎縮症である。survival motor neuron1 (SMN1)遺伝子の変異によりSMNタンパク質発現が低いことが原因である。SMA患者ではSMN2遺伝子由来SMNタンパク質が生命維持に重要な役割を果たしている。本研究では、SMA患者由来の線維芽細胞、リンパ球およびリンパ芽球を用いて、患者細胞におけるSMNタンパク質の発現について検討した。まずSMNタンパク質発現を解析する手法として蛍光顕微鏡システムとフローサイトメトリー法の機能を合わせ持つ、イメージングフローサイトメトリー法(IFC)の開発を行った(国内出願特許登録済、特許第6115979号、Arakawa et al., Pediatric Neurology. 2016., Arakawa et al.,BBRC. 2014)。本手法はタンパク質の発現量のみならず、蛍光顕微鏡システムにより細胞内のタンパク質の局在を描出しタンパク質凝集能を数値で表すことが可能である。本手法により、SMA患者由来線維芽細胞においては、健常人由来線維芽細胞と比較し有意にSMNタンパク質発現量および凝集能が低いことが判明した。さらにSMA患者由来線維芽細胞にHDAC inhibitorであるバルプロ酸ナトリウムを投与することにより、容量依存性にSMNタンパク質発現量が増加することが分かった。次に、樹立したSMA患者由来リンパ芽球では健常人由来リンパ芽球と比較しSMNタンパク質発現量および凝集能が有意に低いことが明らかとなった。さらにSMA患者由来リンパ球におけるSMNタンパク質発現量は、患者の重症度およびSMN2遺伝子コピー数に依存していることが判明した。本研究によりSMA患者由来線維芽細胞および血液細胞におけるSMNタンパク質発現および凝集能についての新たな知見を得た。
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