研究実績の概要 |
てんかんの病態は長い間不明であったが、近年の分子生物学の発展に伴い、てんかんに関連した遺伝子異常が発見されるようになった。単一遺伝子の異常によるてんかんであれば、理論的にはその遺伝子異常を修復することにより、細胞レベルでの疾患関連表現型の妥当性を深めるとともに、細胞間での特性のバラつきによる差異を軽減することができる。生きている細胞の遺伝子を修復することは、かつては不可能であった。しかしながら、近年ではいくつかの革新的な分子生物学的技術により、それが可能となった。また、患者自身の細胞よりiPS細胞を作出し、そのiPS細胞から特定の神経細胞へ分化誘導することにより、従来では困難であった病変細胞を得ることでき、その病因や病態のメカニズムを研究することが可能となった。 ドラベ症候群(DS)は、ナトリウムチャネルをコードする遺伝子、SCN1Aの異常により引き起こされる、単一遺伝子異常に起因した難治性のてんかんである。本研究課題において、TALEN法を用いて、SCN1A遺伝子のエクソン26にナンセンス変異(c.4933C>T, p.R1645*)を有するドラベ症候群患者由来iPS細胞(D1 iPSCs)の遺伝子異常を修復したアイソジェニックなDS iPS細胞を樹立した。これらのiPS細胞より興奮性あるいは抑制性神経細胞へ選択的に分化誘導可能な方法を確立し、加えて、次世代微小電極アレイシステムを用いた神経細胞の活動電位測定を可能にした。これらの成果は、健常人とDS患者で見られる神経活動の差異を指標とした病態解析だけでなく、認可医薬品の添加により神経活動の差異を軽減するような薬剤スクリーニングへ応用可能である。
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