研究課題
「研究の目的]性分化疾患(DSD)は、出生時の外性器異常、思春期発来異常および不妊など、多彩な臨床症状を招く病態である。本研究の目的は、DSD患者を対象とした網羅的遺伝子解析により、既知及び新規DSD原因遺伝子の発見と機能の解明を行うことである。「研究実績]合併症のない尿道下裂症患者66例に対して、25遺伝子を標的とした網羅的遺伝子解析を行った結果、8例に既知遺伝子変異を同定した。このうち1例で既知遺伝子変異が2つ同定された。この結果は、尿道下裂症において初めてoligogenecityの可能性を示すものであった。また希少な遺伝子変異として、MAMLD1遺伝子のスプライスサイト変異を同定した。研究代表者はこの変異が、蛋白合成を障害する可能性を見出した。これらの成果は、論文として発表した。DSD症例のうち、合併症のある症例に対しては、アレイCGH法によりコピー数変化を解析している。特記べき成果として、SOX3遺伝子とその近接領域の重複は46,XX DSDの原因となるが、SOX3遺伝子の重複のみでは性分化異常を生じない事を明らかにした。この成果は論文として発表した。非常に稀な疾患である46,XX精巣性DSDの10例に対しては、全遺伝子のコーディング領域を標的としたエクソーム解析を行っている。現在までに実験は終了し、現在解析中である。「研究の重要性]DSD患者は、出生後の外性器異常により発見されることが多く、社会的性の決定や治療方針を決める上で、遺伝子解析による早期診断が期待されている。また、思春期発来異常および不妊により発見されることも多く、妊孕性を判断する上でも遺伝子解析による確定診断が必須である。本研究で使用している網羅的遺伝子解析法は、既知遺伝子変異を従来法よりも早期に同定可能であるとともに、新規DSD原因遺伝子の発見も期待できることから非常に重要であると考える。
2: おおむね順調に進展している
現在まで約100例のDSD患者に対し、網羅的遺伝子解析を行った。この内、約10%の患者に対して遺伝子変異を同定した。すべての結果は主治医に報告し、DSD患者の診断に貢献している。また研究成果は、精力的に学会や論文で報告をしている。よって現在までの達成度は、おおむね順調であると考える。
今後もDSD患者の網羅的遺伝子解析を行い、既知原因遺伝子変異を同定していくと共に、DSD候補遺伝子変異についても解析を行っていく。特に、今まで原因がよく分かっていない46,XX精巣性DSDについては、全遺伝子を標的とした解析により、新規性分化機構の解明に貢献できる研究を目指す。
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