研究課題/領域番号 |
26860838
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構長良医療センター(臨床研究部) |
研究代表者 |
舩戸 道徳 独立行政法人国立病院機構長良医療センター(臨床研究部), その他部局等, その他 (30420350)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 |
研究実績の概要 |
本研究は、L-アスパラギナーゼによる薬剤性急性膵炎の発症要因の解明及び発症予測法の確立を目指し、まず薬剤性膵炎の既往を有する患者iPS細胞由来の膵外分泌細胞を用いて薬剤性急性膵炎の試験管内疾患モデルの構築を行う。現在までに以下のことを進めた。 ⅰ)L-アスパラギナーゼによる薬剤性急性膵炎の既往を有する患者2例からiPS細胞を樹立した。ⅱ)正常の膵臓発生を模倣した3つのステップ(ヒト幹細胞→胚体内胚葉→膵前駆細胞→膵外分泌細胞)から構成される新規の分化誘導法を開発する目的で、京都大学iPS細胞研究所が所有する増殖因子と低分子化合物ライブラリーを高速スクリーニングにて探索し、膵前駆細胞から膵外分泌細胞へ選択的に分化誘導する低分子化合物を見いだした。ⅲ)高速スクリーニングにより見出した低分子化合物と膵前駆細胞を作製する際に使用するindolactam V(プロテインキナーゼCの活性化物質)を併用することで、最大で約60%の高効率に膵外分泌細胞が誘導されることを見出した。ⅳ)新規に開発した分化誘導法で作製した膵外分泌細胞が生理機能を有することを多方面から確認しており、これまでに膵外分泌細胞系譜の遺伝子が発現していること、培養上清中に生理機能を有するアミラーゼ蛋白が分泌されること、さらに透過型電子顕微鏡を用いて細胞質に分泌顆粒が存在することを確認した。ⅴ)新規に開発した膵外分泌細胞の分化誘導法を用いて、L-アスパラギナーゼによる薬剤性急性膵炎の既往を有する患者iPS細胞から膵外分泌細胞の作製に成功した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究計画では、本研究期間内に以下のことを明らかにしようとした。 ⅰ)誘導した膵外分泌細胞の生理機能をさらに調べるため、膵外分泌刺激機構に関与するコレシストキニンやアセチルコリンの添加を行い、細胞内のカルシウム濃度上昇、アミラーゼや蛋白分解酵素(トリプシンやプロテアーゼなど)の分泌量上昇などの測定を行う。ⅱ)誘導した患者iPS細胞由来の膵外分泌細胞にL-アスパラギナーゼを添加し、死細胞の増加や蛋白分解酵素の増加などを誘発することで、薬剤性急性膵炎の試験管内疾患モデルを構築する。ⅲ)患者由来iPS細胞と健常人由来iPS細胞とを用いた急性膵炎の試験管内疾患モデルを比較検討し、L-アスパラギナーゼによる薬剤性急性膵炎の発症要因を解明する。ⅳ)急性膵炎モデルの膵外分泌細胞の機能を詳細に解析するため、膵外分泌細胞の特異的マーカーであるPTF1A(Pancreas transcription factor 1 subunit alpha)の遺伝子座に緑色蛍光蛋白質(GFP)を導入したレポーターヒトiPS細胞株の樹立を行う。ⅴ)試験管内疾患モデルを用いて判明した薬剤性急性膵炎の発症要因の候補を、臨床データの統計学的解析により裏付けを開始する。 このうち、ⅰ)については終了し、ⅱ)ⅲ)ⅳ)については進行中である。以上から、おおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後、以下の2点について重点的に研究を進める。 ⅰ)患者由来iPS細胞と健常人由来iPS細胞とを用いた急性膵炎の試験管内疾患モデルを比較検討し、L-アスパラギナーゼによる薬剤性急性膵炎の発症要因を解明する。 ⅱ)試験管内疾患モデルを用いて判明した薬剤性急性膵炎の発症要因の候補を、臨床データの統計学的解析により裏付けを開始する。
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