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2015 年度 実施状況報告書

自閉性障害・知的障害のリスク分子A2BP1による病態形成メカニズムの解析

研究課題

研究課題/領域番号 26860839
研究機関愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所

研究代表者

浜田 奈々子  愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所, 神経制御学部, 特別研究員 (70721835)

研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワード神経細胞移動障害 / 樹状突起形成不全 / 軸索伸長抑制 / 樹状突起スパイン形成不全
研究実績の概要

A2BP1は自閉性障害、知的障害、てんかん等の発達障害で遺伝子変異が報告されている分子で、核局在型アイソフォームはスプライシング制御、細胞質型は翻訳調節に機能し、神経制御ネットワークのキー分子として神経組織の分化、発達、さらに神経活動において必須の役割を担う。昨年度までにA2BP1は、両アイソフォーム共に発達期のマウス大脳皮質において、神経細胞の移動、樹状突起形成、軸索伸長及び終末部の成長に関与することを報告した。今年度は細胞質局在型A2BP1について初代培養海馬神経細胞を用いたシナプス形成の解析と、慈恵医科大学薬理学講座籾山研究室との共同研究により、電気生理学的解析を中心に行った。in utero electroporationにより、マウス大脳皮質興奮性神経細胞でA2BP1を発現抑制し、生後3日目と7日目で大脳皮質スライスを作成し、A2BP1ノックダウン細胞で電気生理学実験を行った。その結果A2BP1を発現抑制した神経細胞では、活動電位の発生頻度が著しく抑制されていた。また興奮性シナプス後電流 (sEPSCs)では振幅の低下、抑制性シナプス後電流(sIPSCs)では発生頻度、振幅ともに低下していた。さらにevoked EPSCsの解析により、A2BP1ノックダウン細胞ではNMDA受容体がほとんど機能していないことが明らかとなった。また初代培養海馬神経細胞を用いたin vitro解析を行った。胎生16日目のマウス海馬神経細胞にA2BP1 RNAiベクターを導入し、培養3日目で軸索伸長、7日目で樹状突起形成、21日目で樹状突起スパインの形態解析を行った。A2BP1を発現抑制することで軸索伸長、樹状突起形成、成熟したマッシュルーム型のスパイン形成が抑制された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画に沿って、順調に研究が進展している。細胞質局在型A2BP1の解析については昨年度までに、当該分子の発現抑制が大脳皮質神経細胞の移動障害、樹状突起形成不全、軸索伸長及び終末部の成長抑制、樹状突起スパインの形成不全を引き起こすことを明らかにした。共焦点顕微鏡ライブイメージングによる移動神経細胞の観察から、移動障害は神経細胞の移動機構の1つである中心体による核の引き上げが障害されたためと示唆された。これらの成果は、Hamada N, Ito H, Iwamoto I, Morishita R, Tabata H, Nagata K. Role of the cytoplasmic isoform of RBFOX1/A2BP1 in establishing the architecture of the developing cerebral cortex. Mol. Autism. 6:56, 2015.DOI 10.1186として発表された。
また、核局在型アイソフォームの解析では、慈恵医科大学、薬理学講座、籾山研究室との共同研究により、電気生理学的解析を行った。そしてA2BP1が、活動電位の発生頻度、Spontaneous excitatory postsynaptic currents (sEPSCs)の振幅、Spontaneous inhibitory postsynaptic currents (sIPSCs)の発生頻度、振幅、さらにNMDA受容体の機能を制御していることを明らかにすることができた。

今後の研究の推進方策

当初の研究計画では、平成28年度は、核型A2BP1を発現抑制した大脳皮質成熟神経細胞の樹状突起の全体の分岐や形状、スパイン形態の詳細な解析、軸索伸展、軸索終末部の分岐やシナプス形態の解析を行う予定であったが、核型A2BP1を長期間にわたって発現抑制すると、大脳皮質神経細胞がアポトーシスを起こすことが判明した。そのため、新しい試みとして、新生児マウスの海馬神経細胞にin vivo electropolationによりA2BP1のRNAiベクターを導入し、海馬歯状回神経細胞の形態解析を行う。この方法は当研究室で手法が確立されており、形態解析も比較的スムーズに進行出来ると考えられる。マウス初代培養海馬神経細胞では核型A2BP1の発現抑制によるアポトーシスは観察されないため、この手法を利用し、解析できる可能性は高い。
また、今年度は核型A2BP1のターゲット分子の探索を行う。これまでのアレイ解析などの報告をもとに、可能性の高いターゲット分子を選定する。in utero electropolationによりマウス大脳皮質神経細胞でA2BP1を発現抑制し、その細胞を培養系に移した後、ターゲット分子の発現に変化があるかどうかを検証する。そして同定されたターゲットについては、それらの過剰発現が、A2BP1の発現抑制が引き起こす神経細胞移動障害や回路形成、樹状突起スパイン形成異常等の表現型を改善出来るか検討を行う。

次年度使用額が生じた理由

昨年度計画していた神経細胞をまばらに蛍光ラベルするためのベクターの構築が出来ず、実験が進まなかったため。

次年度使用額の使用計画

今年度にベクターを構築し、in vivo実験に使用する予定である。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2015 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Role of the cytoplasmic isoform of RBFOX1/A2BP1 in establishing the architecture of the developing cerebral cortex.2015

    • 著者名/発表者名
      1.Hamada N, Ito H, Iwamoto I, Morishita R, Tabata H, Nagata K
    • 雑誌名

      Mol. Autism.

      巻: 6 ページ: 00-00

    • DOI

      10.1186

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] 発達障害の背景としての大脳皮質構築異常2015

    • 著者名/発表者名
      浜田奈々子、稲熊裕、永田浩一
    • 雑誌名

      生化学

      巻: 87 ページ: 205-208

    • DOI

      10.14952

    • 査読あり
  • [学会発表] Rbfox1, an autism causal gene, plays an essential role in cortical development2015

    • 著者名/発表者名
      浜田奈々子、伊東秀記、田畑秀典、永田浩一
    • 学会等名
      International Society for Neurochemistry
    • 発表場所
      Cairns, Australia
    • 年月日
      2015-08-23 – 2015-08-27
    • 国際学会
  • [備考] 発達障害研究所神経制御学部

    • URL

      http://www.inst-hsc.jp/d-molecular/index.html

URL: 

公開日: 2017-01-06  

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