研究課題
A2BP1は自閉性障害、知的障害、てんかん等の発達障害で遺伝子変異が報告されている分子で、核局在型アイソフォームはスプライシング制御、細胞質型は翻訳調節に機能し、神経制御ネットワークのキー分子として神経組織の分化、発達、さらに神経活動において必須の役割を担う。昨年度までにA2BP1は、両アイソフォーム共に発達期のマウス大脳皮質において、神経細胞の移動、樹状突起形成、軸索伸長、樹状突起スパインの形成に関与し、電気生理学的解析により、活動電位の発生頻度の低下、興奮性シナプス後電流(sEPSCs)の振幅の低下、抑制性シナプス後電流(sIPSCs)では発生頻度及び振幅の低下が見られ、さらにNMDA受容体の機能が著しく低下していることを報告した。今年度は新生児マウスの海馬神経細胞にin vivo electropolationによりA2BP1のRNAiベクターを導入し、生後28日の海馬歯状回神経細胞の形態解析を行った。大脳皮質神経細胞で核型A2BP1を発現抑制すると、発達期にアポトーシスを起こすのに対し、海馬歯状回神経細胞では生後28日でも細胞は生存していた。細胞質型、核型それぞれのアイソフォームの発現抑制を行ったところ、両アイソフォーム共に細胞移動に異常はなく、樹状突起の長さ、分岐もコントロールと比較し、優位な差は見られなかった。A2BP1は海馬歯状回神経細胞にも発現しているが、形態形成には関与していないと結論づけた。
3: やや遅れている
神経細胞移動におけるA2BP1の機能解明のため、A2BP1のターゲット分子の探索を行う予定であったが、in vivo electropolationによる海馬神経細胞の解析に予想以上の時間を費やしたため、文献等からターゲット分子を絞り込むまでに留まった。
A2BP1のターゲット分子の探索を行う。アレイ解析の報告等から、NMDA受容体、SNAP25、DCX、p35を可能性の高いターゲットして選定した。マウス大脳皮質神経細胞にA2BP1のRNAiベクターを導入し、それぞれのターゲットの発現量を比較する。
昨年度計画していたA2BP1のターゲット分子の探索ができなかったため。
マウス胎仔脳遺伝子導入法により皮質神経細胞でA2BP1を発現抑制し、A2BP1のターゲット候補分子の発現量を比較する。初代培養皮質神経細胞でA2BP1を発現抑制し、同様に候補分子の発現量を比較する。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (1件) (うち招待講演 1件)
Sci. Rep.
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J. Neurochem.
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