A2BP1は自閉性障害、知的障害、てんかん等の発達障害で遺伝子変異が報告されている分子で、核局在型アイソフォームはスプライシング制御、細胞質型は翻訳調節に機能し、神経制御ネットワークのキー分子として神経組織の分化、発達、さらに神経活動において必須の役割を担う。昨年度までにA2BP1は、両アイソフォーム共に発達期のマウス大脳皮質において、神経細胞の移動、樹状突起形成、軸索伸長、樹状突起スパインの形成に関与し、電気生理学的解析により、活動電位の発生頻度の低下、興奮性シナプス後電流(sEPSCs)の振幅の低下、抑制性シナプス後電流(sIPSCs)では発生頻度及び振幅の低下が見られ、さらにNMDA受容体の機能が著しく低下していることを報告した。今年度は、A2BP1のターゲット分子の探索を行った。これまでのアレイ解析の報告等から、NMDA受容体(NR1)、SNAP25、DCX、p35を可能性の高いターゲットして選定した。マウス大脳皮質神経細胞にA2BP1のRNAiベクターを導入し、それぞれのターゲットの発現量を比較した。4つの候補の中で、NR1、SNAP25、DCXに発現量の変化は認められなかった。p35の発現が低下している傾向にあったが、優位な差は見られなかった。
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