研究課題
既知の変異を認めない原因不明の先天性巨大血小板症の親子例について、次世代シークエンサーを用いた全エクソン解析を行い、赤芽球系及び巨核球系に特異的な転写因子GFI1Bに新規遺伝子変異を同定した。26年度はルシフェラーゼアッセイによってGFI1B変異が実際に遺伝子発現制御機能に影響を及ぼすかを検討した。野生型はempty vectorと比較しルシフェラーゼ活性を抑制したが、変異型では抑制はみられなかった。また変異型は量依存的に野生型の抑制作用を阻害したことから、dominant-negativeに作用していることが示唆された。ゲルシフトアッセイでは、野生型GFI1BタンパクはGFI1Bのコンセンサス配列を含むオリゴと結合を示したが、変異型は結合を示さなかった。26年度より継続して、培養巨核球に変異型GFI1bを発現させ、巨核球の分化・成熟、血小板の形態や数への影響を検討した。レトロウィルスを用いてマウスの胎児肝細胞へ変異型及び野生型GFI1Bを感染、培養し、巨核球が胞体突起を形成しながら血小板を産生する様子を観察した。変異型は野生型と比較し一つの巨核球から形成される胞体突起の数が少なく、胞体突起径が大きいことが確認され、GFI1B変異により巨大血小板および血小板減少症を呈する臨床像と矛盾しないと考えられた。28年度は本疾患の診断スクリーニング方法として末梢血塗抹標本を用いた血小板の蛍光免疫染色を検討した。変異患者において健常人ではみられないCD34の異常発現を認め、また血小板のα顆粒に含まれるトロンボスポンジンの染色性が健常人と比較し低下していた。GFI1B変異患者における血小板CD34の異常発現は、これまでフローサイトメトリー法を用いた検討が報告されているが、蛍光免疫染色は末梢血塗抹標本のみで行うことができるため、より簡便なスクリーニング法として有用である可能性が示唆される。
すべて 2016
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Journal of Thrombosis and Haemostasis
巻: 14 ページ: 1462-9
10.1111/jth.13350