研究課題/領域番号 |
26860841
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研究機関 | 独立行政法人国立循環器病研究センター |
研究代表者 |
岩朝 徹 独立行政法人国立循環器病研究センター, 病院, 医師 (80712843)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 肺動脈性肺高血圧 / 右室病理 / 右室線維化 / 右室リモデリング |
研究実績の概要 |
当センターにはその創設以来特発性・その他の原因の肺動脈性肺高血圧症(PAH)で亡くなられた患者(小児・成人)の剖検組織が多数保管されている。今回それらの剖検心のうち特発性肺動脈性肺高血圧・膠原病性肺高血圧患者の2005年までの24例の標本の右室病理をMasson’s trichrome染色標本を用いて解析した。 肺動脈性肺高血圧患者の剖検心では右室の心筋細胞は有意に肥大し、線維化面積も有意に拡大しているにもかかわらず、一視野あたりの小動脈数はむしろ正常心に比較して減少しているという結果を得た。また線維化は心外膜側よりも心内膜側でより強く、心筋が冠動脈経由で心外膜側からのエネルギー・血流供給を受けていることを考慮すれば、右室心筋の相対的な虚血・エネルギー枯渇が原因であることを推測した。
本疾患においては10代前半の患者であっても、強い右室の線維化を伴っており、年齢によらず右室は線維化しており、その線維化の度合いには年齢や肺高血圧の程度(肺血管抵抗値・肺動脈圧)といった肺血管の障害の重篤度よりも、発病からの期間のみが相関することを見いだした。すなわち、発症早期からの治療が重要であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
病理組織標本の解析・それと関連する臨床情報との相関の解析は予定通り行われており、現在の段階で一旦論文化中である。免疫染色による解析は、適当な標本を使用して次年度から行う予定。 新たな剖検症例が出現した場合にホルマリン固定前の標本で行う予定であった、剖検直後の右室心筋のmRNA解析・cDNA採取は現在の所新たな剖検症例がないため、剖検直後症例の心筋のmRNA解析は今のところ行えていない。
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今後の研究の推進方策 |
現在の状況でまず論文化し、成果を公表する予定です。次年度は保存の状態の良い標本に対して免疫染色を実施し、caveolin、CD31、eNOSといった血管内皮細胞や右室心筋のリモデリングに関与する抗原についての解析を追加する予定。 また新たな剖検症例が発生した場合、許諾が得られれば剖検心でのcaveolin等過去の論文で報告のある右室心筋の線維化に関与する因子のmRNA解析を考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度の間はこれまでに病理解析を行った検体の再解析とそれに基づいた論文執筆や発表が主体となったため、当初予定していた免疫染色に必要な抗体やそれに関わる機材の物品購入がなく、計画より少ない状況となった。
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次年度使用額の使用計画 |
論文掲載が行われる見込みの段階で次のステップである免疫染色など物品購入を多数伴う解析に踏み込む予定であり、今年度は免疫組織染色用の抗体やそれにかかわる試薬、物品、解析に必要なコンピューターやハードディスクの購入を行うことで、繰り越して使用を計画している。
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