研究課題/領域番号 |
26860842
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
臼田 治夫 東北大学, 大学病院, 助手 (60722402)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 成育限界児 / 胎児循環 / 人工胎盤 / 膜型人工肺 / ヒツジ / 脳白質損傷 / 後負荷不整合 / Microsphere法 |
研究実績の概要 |
成育限界期に出生する早産児の後遺症なき生存 (intact survival) を達成するために,ヒト胎盤循環を模した体外式補助循環システム (ポンプレス人工胎盤) を開発した.本研究期間内には,ニプロ社と共同開発した世界最小容量の膜型人工肺を並列回路でヒツジ胎仔に装着し,妊娠90-100日 (ヒト妊娠24-27週に相当) かつ体重1.0 kg以下の小さなヒツジ胎仔でも,72時間以上安全に呼吸循環管理できることを証明する. 平成26年度には妊娠104 (n=2),101 (n=2),98日 (n=5) のヒツジ胎仔に人工胎盤回路を装着した.いずれも60-72時間生存させることができたが,その循環管理に難渋した.妊娠98日の胎仔は心筋の未熟性による後負荷不整合のため血管拡張剤 (ニトログリセリンもしくはPDE阻害剤) の持続点滴を必要とした.そのため人工胎盤回路血流を50 ml/kg/minの正常下限に制限せざるを得ず,体動に伴いに回路血流が大きく動揺してしまった.その結果,9例中6例で巣状の脳白質損傷が認められ,その内の3例は脳軟化ならびに実質内出血を伴っており,脳血流量を安定して維持させる循環管理法の開発が焦眉の急となった. また,microsphere法を用いて胎生期と人工胎盤装着時で臓器血流分布の違いを比較する予定であったが,胎仔大腿動静脈が著しく細いため下大静脈と腹部大動脈にはカテーテルを留置できなかった.そのため,やむなく人工胎盤装着下でのみ臓器血流量を計測した.これを克服するため,来年度には臍帯動静脈の分枝を確保することによって下大静脈と腹部大動脈にカテーテルを留置し,臓器血流量計測に再挑戦する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
著しく未熟な妊娠90日台(体重700-800 g)のヒツジ胎仔に人工胎盤を装着させて72時間生かすことには成功した.しかし,脳白質損傷を生じないような脳血流量を変動させない循環管理が必要である.また,臓器血流分布を解析するためには腹部大動脈にカテーテルを留置する方法の開発が求められる.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度には妊娠100日のヒツジ胎仔(体重1000g前後)を用いて,人工胎盤装着中の脳血流量を安定させ脳白質損傷を予防する循環管理法を確立する.同時に臍帯動静脈の分枝を確保することによって下大静脈と腹部大動脈へのカテーテル留置に挑戦する.
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