平成26年度は胎児付属物からの間葉系幹細胞の分離・培養を開始した。神戸大学医学部倫理委員会の承認(平成25年1月15日)のもと、神戸大学付属病院および兵庫県立こども病院で娩出された新生児から臍帯および臍帯血を採取した。接着培養により、臍帯から高頻度に紡錘状の細胞を得ることに成功し、FACS解析によりCD105・90・73が陽性、CD14・19・34が陰性であること、くわえて分化誘導実験により脂肪・軟骨・骨細胞への分化能を確認、間葉系幹細胞(MSC)として矛盾しないことを証明した。
平成27年度は多様な週数の新生児から臍帯由来MSC(UC-MSC)を収集し、週数による特徴を解析すべく基礎的検討を行った。具体的には、得られたUC-MSCから全RNAを抽出し、すでに小児科研究室に設置されているDNAマイクロアレイシステムを用いて網羅的遺伝子発現解析を行った。パスウェイ解析により有意な変動を示したWNT関連遺伝子群に注目して検討をすすめ、リアルタイムPCR法により再現性を確認した。また、これらWNT関連遺伝子群がUC-MSCの増殖能と関連していることを見出した。
平成28年度は基礎的検討から動物実験に移行した。当初計画していた新生児低酸素性虚血性脳症のモデル作成に難渋したことから、同じく重篤な新生児疾患である慢性肺疾患モデルを用いてUC-MSCの効果を検証した。結果、ブレオマイシン誘導急性肺障害モデルラットにおいて、UC-MSCにより肺組織における線維化や炎症細胞浸潤の程度が軽減することをすでに明らかとした。現在は肺組織中のサイトカインについて解析中であり、さらにUC-MSCの由来週数による効果の違いについても追加解析を予定している。
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