研究課題
本研究では、新生児低酸素虚血性脳症の病態を解明しその新規治療法開発のための、基礎研究を行なった。我々が独自に開発した、新生仔豚低酸素虚血性脳症モデルを用い、低酸素虚血負荷中及び後の、脳血液量や脳波活動について測定記録し、負荷後4日目の病理組織標本を作製した。負荷のみ10例、負荷+低体温療法10例、対象群3例、低体温療法のみ3例の実験を実施した。これらを比較対象とし今後他アルブミン投与例の検討している。これら研究結果を受け、新生児低酸素性虚血性脳症の病態生理解明に寄与した。新生児低酸素性虚血性脳症では、低酸素虚血負荷中には低酸素虚血に代償すべく脳血液量が増加し、低酸素虚血負荷が持続した場合にはこれが破綻する。低酸素虚血負荷後に蘇生を行うと、血圧や低酸素が急激に改善され、再環流障害が起こる。本研究では、この低酸素虚血負荷の程度により、その後の脳血液量の変化や、脳波上の神経活動抑制にパターン分類ができ、それが病理組織上の脳障害と相関することを見出し、そのモニタリングが、新生児低酸素性虚血性脳症の評価に重要であると考えられた。つまり、低酸素虚血負荷により脳波上の神経活動抑制時間が長い症例ほど、負荷中の脳血液量の低下及びその後の上昇が大きく、その後の病理組織上の脳障害が強い。この関係は低体温療法を実施することにより変化するため注意が必要だが、この変化も、低体温療法の適応を判断する上で重要である可能性がある。すなわち、低体温療法実施すると、脳血液量が低下するため、低酸素虚血負荷後の脳循環をさらに悪化させ、脳障害を助長する可能性があり、新生児低酸素性虚血性脳症に対する低体温療法の適応判断には、脳血液量の測定が重要である。成果については、第53回日本周産期新生児医学会学術集会にて口演予定である。また、学術論文を査読のある英文雑誌に投稿し、これまで2編掲載され、また現在も1編投稿中である。
すべて 2017
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)
Neonatology
巻: 111 ページ: 203-210
10.1159/000450721