研究実績の概要 |
本研究は、NIRSを用いて、早産時の生理的条件化での脳活動、とくに領域間の機能的結合を定量的・経時的に計測することで早産時の脳成熟過程の特徴を明らかにすることを目的とした。具体的には、同一早産児において、4週間隔ごとに複数回のNIRS測定を行った。この研究を進めていく上で、MRIで観察される脳障害がNIRSで測定した機能的結合に影響を与えていることが示唆されたため、MRIデータと1歳半、3歳での発達検査の成績を加えることにより、脳傷害群や発達予後不良群の特徴的なパターンを新たに定義することも目的とした。 平成28年度までに、本研究には55名の児(早産児47+正期産8)がエントリーされ、NIRSデータ、MRIデータ、発達予後に関するデータを収集した。平成28年度は児の発達検査とMRIデータの解析を行った。現時点で、エントリーされた児の約8割において3歳時発達検査が終了した。早産児のMRIを用いた体積解析は確立されたプログラムがなかったため、独自のプログラムを開発し解析を行った。すべての児の発達検査がまだ終了しておらず、解析途中であるが、発達正常と考えられる群におけるNIRSデータにおいては、領域間の機能的結合は受胎週数が増加するにつれ増強される傾向を捉えることができた。領域別の検討では、受胎26週では側頭部を含む結合が確認されやすく、30,34週では前頭部を含む結合が確認される傾向が示唆された。片側脳傷害例においては、傷害側の機能的結合が低下していることが確認された。全児の発達検査の完了をもって、発達正常群と発達予後不良群の解析を行い、予後に関係するパラメーターを抽出したい。また、本研究は引き続き継続し、6歳児の発達検査結果も踏まえて解析を追加する予定である。
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