研究課題/領域番号 |
26860852
|
研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
谷田 任司 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (30589453)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | エストロゲン関連受容体ERR / PGC-1 / ライブセル・イメージング / 神経内分泌学 / FRAP / FRET / 視床下部 / 海馬初代培養 |
研究実績の概要 |
エストロゲン関連受容体(estrogen-related receptor: ERR)は,エストロゲン受容体(estrogen receptor: ER)αと高い相同性を持つオーファン受容体である。当該年度においては,3つのサブタイプのうち特に好気的エネルギー産生に重要であるα型およびγ型に着目し,その細胞内動態や転写共役因子PGC-1との相互作用が神経系の発達にどのような影響をもたらすか解明することを目的として研究を行った。以下に概要を示す。 1)昨年度確立したThy1-GFP系マウス胎児の海馬初代培養系は,GFP発現神経細胞の少なさ,交配頻度の低さ,産仔数の少なさより取りやめ,Wistar系ラット胎児の海馬初代培養系を確立し,GFPあるいはそのカラーバリアントを導入して使用することとした。PGC-1を上記ラット海馬初代培養系に導入すると,神経突起の伸長が促進されることを見出した。 2)PGC-1/ERRシグナルが細胞外環境の変化など種々のストレスに応じて細胞内動態をどのように変化させるか,生細胞イメージングにより現在も解析を継続中である。 3)ラット視索前野における性的二型核AVPVおよびMPOAにおいて,ERα陽性神経細胞にERRγが発現することを既に見出しているが,その割合はAVPVとMPOAの間でかなり異なることが判明した。即ち,ERα陽性神経細胞全体に占めるERα/ERRγ二重陽性神経細胞の割合は,AVPVの方がMPOAよりも顕著に高いことが見出された。その生理的意義を今後検証してゆく。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ERαは脳発達の過程における種々の遺伝子発現をエストロゲンの影響下で様々に修飾し,特に,性特異的な脳機能形成においては決定的な役割を果たす。しかしながら,その分子メカニズムはあまり解明されていない。当該科研費の初年度においては,ERRのサブタイプの1つであるβ型がERαの機能に及ぼす作用を生細胞イメージングや生化学的手法を活用することで解明でき,論文に掲載された(Tanida et al, J Biol Chem, 2015)。当該年度においては,ERRの別のサブタイプであるα型およびγ型の脳発達における作用を明らかにするため,その転写共役因子PGC-1との相互作用に着目し,神経系の発達に対する作用を解析中である。海馬初代培養系のラットを用いた再確立や,種々のプラスミドの構築が当該年度においてほぼ完了したことから,来年度には,一定の成果が見込まれている。従って,初年度および当該年度を含め,本研究計画はおおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
1)好気性代謝シグナルPGC-1/ERRの細胞内動態とその生理的意義の解明:ERRおよびPGC-1を細胞に発現させ,種々の環境/代謝性ストレスを与えた際の動態の変化,エネルギー代謝の変化などを解析する。 2)ラット海馬初代培養系における好気性代謝シグナルPGC-1/ERRの役割:既に,ラットの神経突起の伸長がPGC-1によって促進されることを見出しており,この現象は脳発達の過程で重要であると考えている。今後,そのメカニズムを詳細に検証してゆく。 3)ラット視索前野の性的二型核におけるERRγの役割の解析:視索前野の性的ニ型核には,雌において優位なAVPVと雄において優位なMPOAの2領域が存在し,それぞれ機能は異なるがいずれもERα陽性ニューロンが高密に存在する。ERα陽性ニューロンにおけるERRγ発現ニューロンの割合は2領域の間で顕著に異なっていることから,ERαの脳部位特異的な機能にERRγが関与するのかどうか,検証してゆく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
ほぼ計画通り科研費を使用したが,概ね順調に研究が進展し,若干の余りが出た。現在科研費は基金化されているため,年度末に計画外の品物を購入して無理に使い切ることの無いよう,余った6651円は次年度に持ち越し,消耗品に充てる。
|
次年度使用額の使用計画 |
上述の通り,実験用の汎用消耗品に使用する予定である。
|