研究実績の概要 |
申請者は、ラット初代培養神経細胞に対するSCRN1の神経分化への関与について検討を行った。アデノウイルスベクター(AD-GFP,AD-SCRN1)を用いてラット初代培養神経細胞へ遺伝子の導入を行った。ラット初代培養神経細胞へADV-SCRN1によるSCRN1の遺伝子導入を行った結果、WB法でSCRN1タンパク質の過剰発現が認められた。このSCRN1を過剰発現させた、神経細胞では神経突起の伸張が抑制された。SCRN1に特異的なsi-RNA (si-SCRN1) をラット初代培養神経細胞に対して導入した結果、神経細胞の神経突起の伸張が認められた。これらの結果から、SCRN1がラット初代培養神経細胞においても神経分化に関与することが明らかとなった。また、申請者はSCRN1の標的についてマウス神経芽細胞腫由来のN1E115細胞を用いて検討を行った。si-SCRN1およびAD-SCRN1を用いてSCRN1遺伝子発現の調節を行い、SCRN1の発現とパラレルに変化する神経分化に関係する細胞内シグナルについてRT-PCR法やWB法を用い検討を進めた。その結果、MAPK family、Wnt/beta-catenin、PI3K/AKT family、Notchなどの発現変化やリン酸化による活性化は認められなかった。 発生におけるSCRN1役割について遺伝子改変マウスを用い検討した結果、SCRN1の発現が低下することにより、マウスの出生率が著しく低下した。そこで、妊娠10.5日の母体マウスにおいて、発生中の胎仔数を検討した結果、SCRN1の発現は受胎率には強く影響を与えないことが明らかとなった。また、発生中のマウス胎仔にはおおきな外見的変化は認められなかった。SCRN1Koマウスでは、娠後期の胎仔の大きさが対象群と比較して有意に低下しており、脳/体重には大きな変化は認められなかった。
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