研究課題
近年中~低リスク新生児における学齢期以降の高次脳機能障害を中心とした発達障害が注目されている。本研究ではその原因を多角的な脳機能観察ツールによって突き止めるとともに、介入可能な標的を明らかにすることを目的としている。2016年度に我々は近赤外線時間分解分光法(TRS-NIRS)を用いて、生後まもなく頭部から取得された光散乱係数は在胎週数や体重などの内的成熟度だけでなく,出生児の状態,特にApgarスコアに代表されるストレス深度や,血液ガスpHやBase-excess,呼吸管理の要否などに関連した変動をみせることを報告した。これに続いて2017年度には予定日周辺に取得した光散乱係数と臨床変量との関係を検討した。NICUに入院した新生児60例を対象に退院前(予定日周辺)TR-NIRSを行い、光散乱係数と臨床変量を線形回帰分析で評価した。その結果予定日前後の光散乱係数は在胎週数、出生体重・身長・頭囲、Apgar score(1分・5分)、検査時の日齢、修正在胎週数、早期栄養確立と正の相関を認めた。このことから予定日前後の光散乱係数は検査時点での成熟度とともに、出生時点での内的成熟度、胎外での栄養状態と関連した変動を見せることが明らかになった。本研究期間に残された課題として経時変動の評価とその操作因子の解明、短・長期エンドポイントとの関係性の検討があげられる。今後はTRS-NIRSの繰り返し評価可能であるという利点を活かして散乱係数を経時的に測定し臨床経過との比較検討を進めることで、短期エンドポイントであるMRI評価および長期エンドポイントである認知機能、高次脳機能を占う早期マーカーの確立を目指したい。
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Canadian respiratory journal
巻: 2017 ページ: 1-6
10.1155/2017/8349874