研究実績の概要 |
わが国では年間 6 万人余りが早産(妊娠 22 週から 37 週未満)で出生し、早産率は約 6% である。早産児は呼吸器障害、神経障害などの合併症を伴うことがあるが、その原因の約半数に細菌感染や、病理的な絨毛膜羊膜炎(CAM)が認められる。感染性早産は臨床的に抗菌薬の効果は低くその制御は今尚困難である。当センター流早産胎盤における Ureaplasma spp.の分離頻度は42%であり、CAM の起因微生物として最も重要な細菌の一つである(Namba et al., Ped Res, 2010)。 これまで、U. parvumは宿主細胞に感染後クラスリン依存性のエンドサイトーシスで取り込まれた後、初期エンドソームから後期エンドソームへと移動し、取り込まれたU. parvumの一部がオートファジーによって分解されている事を報告してきた。他方、細胞内に取り込まれたU. parvumの一部はオートファジー経路を逸脱し、少なくとも14日間宿主細胞内で生存した。さらに、細胞内に侵入し生き延びたU. parvumのその後の挙動について解析した。宿主細胞内に取り込まれたU. parvumの一部は、リサイクリングエンドソームに取り込まれていた。次に、ウレアプラズマが細胞外に再度放出されるのか見当したところ、感染培養細胞エクソソーム画分にU. parvumが含まれていることを見出し、エクソソームマーカーとU. parvumの局在が一致することを見出した。さらに、エキソサイトーシスされたU. parvumは、新たな宿主細胞への二次感染能を有している事が確認された(Nishiumi et al., Microbiology Open, 2017)。これらのことは、宿主細胞に感染したU. parvumは、宿主細胞膜を利用しながら、免疫グロブリン等の宿主の免疫機構を回避している可能性を示唆する。
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