研究課題/領域番号 |
26860872
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
岡本 芳伸 金沢大学, 大学病院, 助教 (90707100)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 全身性強皮症 / IL-17A |
研究実績の概要 |
本年度は、強皮症モデルマウス(成長因子注射モデル)における線維化の機序について、IL-17Aの役割を検討した。野生型と比較してIL-17A欠損マウスにおいては、Transforming growth factor(TGF)-β投与モデルの線維化が改善することを確認した。しかし、TGF-β投与Connective tissue growth factor(CTGF)連続投与モデルでは、IL-17A欠損マウスにおいても線維化が持続し改善に乏しい結果が得られた。そこでCTGFに代わりIL-17AをTGF-βに連続投与するモデルを新たに作成し検討したところ、このモデルでも線維化が持続することを確認した。以上より、IL-17AはCTGF産生と関連して線維化病変の形成や維持に関わっている可能性が示唆された。 組織標本の検討では、TGF-β投与モデルで、IL-17A欠損マウスにおける線維化改善にかかわらず、病変部へのマクロファージ浸潤の増加を確認した。炎症制御性マクロファージの関連を疑い、CD206陽性細胞を評価したところ、線維化減弱部への浸潤を確認し、このモデルの線維化の改善に制御性マクロファージが関与する可能性が示唆された。TGF-βとCTGFの連続投与モデルでは、IL-17A欠損マウスにおいてリンパ球浸潤の減少を確認した。 ほか予定通り、各種強皮症モデルマウスにおけるIL-17A阻害物質の投与実験も平行して行った。 また来年度の予定を前倒しして、抗IL-17A抗体の投与による線維化の改善効果の確認を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
IL-17A欠損マウスにおいても、強皮症モデルによっては線維化が持続することや、マクロファージ浸潤の増加がみられることなどの興味深い結果を確認した。強皮症モデルの線維化におけるIL-17Aの役割として、線維化の維持に働くCTGFとの関連を示唆する知見が得られた。またIL-17A欠損における線維化改善と制御性マクロファージとの関連を示唆する知見も得られた。 線維化におけるIL-17Aの作用機序の解明という本研究の目的に合致して、治療や創薬といった今後の発展性につながる新知見が得られており、結果は意義あるものと考える。 しかし、マウスの成育が予定より遅れたため、予定していた研究の一部を次年度に行うこととなり、計画の達成度はやや遅れていると自己評価した。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、強皮症モデルにIL-17Aを抑制する薬剤の投与を継続し、組織標本やRT-PCRなどを用いて線維化への影響の評価や解析を行う。その結果から、線維化におけるIL-17Aの役割をより詳細に検討し、創薬へ繋がる研究を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度はマウスの成育が遅れたため、研究費の未使用額が生じた。 また計画の比較的早期の段階で興味深い結果が得られたために病態の評価と検討にも時間を要し、各種サイトカインや薬剤の本年度の実際の使用量は見込みより少なくなった。今後使用する薬剤の購入費用ほかは次年度に繰り越すこととなった。
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次年度使用額の使用計画 |
現在マウスの生育は順調であり、次年度は管理するマウス個体数も増え、マウス管理費が高額になる予定である。またマウスに投与する複数の薬剤に加え、サイトカインや抗体などの高額試薬を追加購入する予定である。PCRや組織染色など解析に用いる試薬や消耗品の購入にも研究費を使用する予定である。
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